「T2 トレインスポッティング」から考える若者の未来と犯罪



「トレインスポッティング」ではレントンやシックボーイ、ベグビーにスパッドは、ろくに仕事をするでもなくドラッグやアルコールに溺れ、それらを買うためのお金を得るのに強盗をするという日々を過ごしていました。

Piquero(2014)では、2つの都市において犯罪を繰り返す若者について調査したところ、自分の未来に希望を持てない若者の、再犯率が高くなっていることが示されました。

なるほど、レントンたちが結局は犯罪を繰り返したり、ドラッグに溺れたりしてしまうのも、未来への希望のなさが原因だったのかもしれませんね。

確かにスコットランドではイギリス全体の緊縮政策によって労働者階級は切り捨てられ、希望が持てない状況が続いていました。

日本では安心か、というとそんなことはありません。
内閣府(2014)では、13歳~29歳の若者を対象に、「自分の将来について明るい希望を持っていますか?」という質問に対する回答を、日本、韓国、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデンの7ヵ国で比較したところ、日本以外の6ヵ国は80%以上の若者が「希望がある」「どちらかと言えば希望がある」と回答していたのに対し、日本の若者は、61.6%に留まったという結果が示されました。

この背景は、進学や就職などで失敗してしまうと再起が難しいというシステムの問題や、"さとり世代"と揶揄されるように、あらゆるものに興味がない、欲がないために消費行動を控える傾向が強いことなども指摘されていますが、やはり自信のなさや消極性から来ているのではないでしょうか?

海外留学や国際交流などを経験している若者には上記のような傾向が見られないというデータもあるので、やはり積極的に行動して、自分の視野を広げていくことが大切ですね。

レントンたちみたいにこのまま突っ走るしかないという生き方を選ぶのも1つの道ではありますが、そこまで追い込まれる前に、様々な可能性を考えてみることが重要です。


[引用]
内閣府(2014). 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~. 平成26年版 子ども・若者白書.

Piquero, A. R.(2014). “Take My License n’ All That Jive, I Can’t See … 35”: Little Hope for the Future Encourages Offending Over time. Justice Quarterly, 33, 73-99.
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「3月のライオン」から考える成長の心理学



「3月のライオン」では、主人公の零だけでなく、川本家の人たち、幸田家の人たちが逃げたり、殻に閉じこもったりするのではなく、勇気を持って前に進む成長の物語となっています。

それでは、人の成長を決める要因とは何でしょうか?

Dweck(2007)は、20年に渡る研究によって、考え方によっては自分の知性や能力を延ばすことが可能であることを証明しています。

彼は、人間の思考態度を、「固定された思考態度(fixed mindset)」と「成長する思考態度(growth mindset)」に分類しています。

「固定された思考態度」の特徴は、
・根本に「自分をよく見せたい」という欲求がある
・失敗する可能性がある挑戦を避ける
・障害にぶつかったときの諦めが早い
・批判が有用なものでも、ネガティブな内容だと無視する
・他人の成功を脅威と感じる

です。

これに対して、「成長する思考態度」の特徴は、
・根本に「学びたい」という欲求がある
・挑戦を喜んで受け入れ、困難があっても立ち向かう
・熟達するためには努力が必要だと考える
・批判からも学ぶ
・他人の成功からもインスピレーションを受ける

です。

彼は、4歳の子どもたちに、この2つの思考態度のどちらかを教えてから、その後に簡単なジグソーパズルをやってもらいます。このジグソーパズルを完成した後で、同じパズルをもう一度やるか、もっと難しいパズルをやるかを選択させたところ、「固定された思考態度」について教えられた子どもたちは、同じパズルを選択する割合が高くなり、「成長する思考態度」を学んだ子どもたちは、もっと難しいパズルを選択する割合が高くなっていました。
これは、同じパズルを選択するということは、すでに解いた問題のため次も確実に完成させることができ、つまりは自分の能力を見せるということにつながります。対して、より難しいパズルを選択するということは、すでに解いた問題を繰り返し解くということに意義を感じず、自分のためになる方を選択しているということです。

また、10代の子どもたちを対象に非言語のIQテストを実施し、その結果を伝える時に、「○点だったの!良い点ですね。あなたは頭が良いわ。」と能力を褒めるグループと、「○点だったの!良い点ですね。よく頑張ったわ。」と努力を褒めるグループとで、その後に用意した2種類の問題のどちらを選択するかを比較したところ、能力を褒められたグループは簡単な問題を選ぶ傾向が強く、努力を褒められたグループはより難しい問題を選ぶ傾向が強くなっていました。
さらに、両グループの子どもに、子どもには解けないほど難しい問題を与えたところ、能力を褒められたグループの子が、自分のことを頭が悪い、出来が悪いと考えるようになっていました。

これは、そのテストを受けているときだけでなく、それ以降にも新たな問題に取り組む意欲や姿勢に影響します。
成長する思考態度の子どもたちは、新しい問題にも意欲的に取り組み、失敗を恐れないで成長していけるのですが、固定された思考態度の子どもたちは失敗を恐れるあまり新しい挑戦をしなくなり、完璧主義的な考え方で自分はおろか周りの人の失敗なども許容できなくなっていきます。

その後の研究でも、固定された思考態度の子どもたちに、「友だちにテストで何点だったか伝えるための手紙を書いてください。」とお願いしたところ、嘘をついて実際よりも良い点数を書く傾向が強かったということも示されました。

批判や失敗を恐れずに問題に立ち向かうことが成長の糧となるんですね。
「3月のライオン」でも零やひなたは自分の置かれた状況や苦手な相手と向き合うことを選択した結果、その後の成長へとつながっていったのかもしれません。
歩のように、たとえ一歩ずつしか前進できなくとも確実に前を向いていればいつかと金になれるというのも、まさにその教訓でしょう。

[引用]
Dweck, C.(2007). Mindset: The New Psychology of Success. Ballantine Books.

「人生フルーツ」から考える高齢者のQOL



「人生フルーツ」では建築家の修一さんとその妻の英子さんの姿を追ったドキュメンタリーでしたが、本作を通して伝わってくるのはお二人の人柄と仲睦まじい姿でした。

とりわけ日本では超高齢化社会と言われるほどの高齢者の割合が高くなってきているにも関わらず、その全ての人が幸せな人生を送っていたかというと、独居老人や孤独死、老年性うつといった問題もあり、必ずしもそうとは言えないのが現状です。

ひとりひとりの人の人生の内容や質、人間らしく文化的で社会的な生活が送れているかどうかをしめす指標は、クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life, QOL)と言います。

小谷(2013)では、全国の男女800人に対して、自分の置かれている状況と幸福度についての関連を調査したところ、近所の人との交流がある人ほど幸福度が高いこと、また住んでいる地域に愛着があるほど、幸福度が高いことが示されました。

津端夫妻は、住宅地の拡張によって削られてしまった山に植樹をしたり、自然との共生をテーマに地域との交流も盛んでした。
また修一さんは建築を通して、英子さんはその生き方を通して多くの人と関わってきていました。
そして何より2人がお互いを思う気持ちが何より幸福感につながっているのかもしれませんね。

90歳になっても自分の妻のことを、最高のガールフレンドと呼べるのはまさに最高のQOLと言えるのではないでしょうか?

[引用]
小谷みどり(2013). 人づきあいと幸福度との関係. LifeDesign Report, Winter 2013.1, 16-23.

「キングコング:髑髏島の巨神」から考えるゴリラの心



「キングコング:髑髏島の巨神」では、南海の孤島、髑髏島で調査と称して爆撃をするなど人間たちの身勝手な行動が、島の守護神でもあるキングコングによって一蹴されるのですが、他の巨大生物たちと共闘したり、自分や島に危害を加えない人間に対しては攻撃してこなかったりと、単なる猛獣とは言えないレベルの行動を見せています。
それでは、ゴリラの知性とはどのぐらいなのでしょうか?人間の言葉や心を理解できるものなのでしょうか?

Patterson(1978)では、1歳のメスゴリラ"Koko"は、30ヶ月のトレーニングによって、100語もの手話を理解するようになったということを示しています。
最終的にはKokoは2000語を理解するようになったとのことです。
さらにKokoは、絵本で気に入っていたネコを実際にペットとして愛することができ、そのネコが死んでしまったときには悲しみの感情を伝えてきたということです。

ただしこれらの研究成果には批判も存在しています。
有名な事例としては、ハンスという馬のエピソードがあります。

20世紀初頭のドイツ、ヴィルヘルム・フォン・オーステン卿の飼っていた馬、ハンスは、計算や曜日のカウントができ、その答えを蹄をならした回数で示すことができたそうです。
しかし、その後の検証では、ハンスが正しく答えるためには、質問者がハンスの近くにいて、かつ正解を知っている場合のみに限られるということがわかりました。
結局のところ、ハンスは答えが分かっていたのではなく、答えを知っている人間は、正解のタイミングになるとどうしても反応(体勢を変える、体に力が入る、表情に変化が現れる、など)をしてしまうので、その反応を理解し、反応があった時に蹄をならすのをやめるということをしていたのでした。それはそれで賢い気もしますけどね・・・。

このことはクレバーハンス効果と呼ばれ、警察犬の訓練などの際に、本来は正しい臭いを識別してほしいのに、訓練者の態度で反応してしまうなどの問題がある時に取り上げられています。
訓練者が正解を知らない、訓練対象の犬の視界に入らないなどの工夫が必要なようですね。

キングコングも人間が自分の敵対するものなのかそうでないかをしっかりと見極めていたということでしょうねえ。
敵に回らないようにしたいものです・・・。(;・∀・)

[引用]
Patterson, F.G.(1978). The Gestures of a Gorilla: Language Acquisition in Another Pongid. Brain and Language, 5, 72-97.

「ハードコア」から考える一人称視点の没入感



「ハードコア」では、終始、視点が主人公の一人称となっていて、P.O.V.というよりは、F.P.S.と言った方がふさわしいような徹底ぶりでした。
これは映画よりもゲームの世界で取り入れられている手法ですが、その理由としては、やはりその世界に入り込める、世界に浸れるというところが大きいのではないでしょうか。

渡邉・長野・岡ノ谷・川合(2014)では、実験参加者にCGで作成した仮想空間において、画面を一人称的に呈示することで没入感が高まるかを調査しています。

その結果、没入感を高める要因として、時間的遅延のなさ、つまりは自分の視線、視点の動きと同期していることと、見ている画像の解像度、つまりは視野、視界の鮮明さが重要であるということが示されました。

この研究では操作を求められるゲームタイプのものであるので、さらに操作性なども加わるのですが、ともあれ、時間の同期と視野の鮮明さというのは、まさに自分の見たままに対象を捉えるということで重要なんですね。

「ハードコア」では、視線、視点の同期は高いですが、画像の鮮明さという点では若干低いです。
これがゴア描写が多いので多少フィルターをかけているのか、単純に予算的な問題なのかは分かりませんが、よりクリアな映像であれば、さらに没入感が高まるということが考えられます。

そしてゲームとは違い、操作性や慣れの必要もないので、誰でも楽しめるという点では、映画がゲーム以上にP.O.V.のコンテンツにマッチしている可能性もありますね。
さらには、VRを始めとしてハード面での進化もあるので、それに追いつく形でこういったコンテンツが展開されていくのではないでしょうか?

ただし操作的な慣れは必要ないですけど、映像的な慣れは必要なので、P.O.V.酔いにはご注意を!(;・∀・)

[引用]
渡邉翔太・長野祐一郎・岡ノ谷一夫・川合伸幸(2014). 仮想空間における没入感の定量化手法の提案 -仮想空間内での身体移動のずれが没入感に及ぼす影響-. 2014年度日本認知科学会第31回大会発表論文集, 92-95.
プロフィール

すぷーとにく0107

Author:すぷーとにく0107
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中の人は、北海道は札幌市在住です。
映画館で年間200本は映画を観ます。
当ブログでは、映画のレビューをしつつ、勉強している心理学ネタでも書いていけたらいいなと思っています。

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