
(公式HPより引用)
[story] ある青年が自宅アパートで死亡する。その事件を取材することになったADの彩乃(板野友美)は、その青年の恋人から、彼の死は「のぞきめ」の呪いであると言われるのだが・・・。
三津田信三の同名小説を、元AKB48の板野友美を主演に迎え映画化したジャパニーズ・ホラー。監督は「トリハダ」シリーズの三木康一郎。脚本は「アヒルと鴨のコインロッカー」「ゴールデン・スランバー」などの伊坂幸太郎作品や「仄暗い水の底から」「残穢(ざんえ) -住んではいけない部屋- 」のホラー作品で知られる鈴木謙一。
「サウルの息子」「リップヴァンウィンクルの花嫁」と、ミニシアター系の映画を連続して書きましたが、ブロックバスター系のハリウッド大作も見ますし、こういった邦画も見ます。要するになんでも見ます。
とりわけ、ジャパニーズ・ホラーは結構好きで見ていますが、怖いというよりはツッコミどころ満載という作品が多くなってきている気がします。
本作もそれにおもいっきり該当していますので、ツッコミとともにネタバレ全開で書いていきたいと思います。
↓↓↓ネタバレ注意!↓↓↓
冒頭、何かに怯えた青年がホームセンターでガムテープを大量に購入する。そして部屋中の隙間という隙間を目張りし震えながらも眠りにつく。
夜中に目が覚めると、書類ケースかなんかの隙間(というか取っ手の空いているスペース)が目張りされておらず、そこには血走った2つの目が!
恐怖のあまりベッドの下に隠れた青年だったが、ベッドの上から謎の手が。
シーンは変わり、テレビ局。グルメ番組の編集をしていた三嶋彩乃(板野友美、以下ともちん)は上司にダメ出しをされる。
元AKBのオシャレ番長のともちん、オシャレはもちろんネイルの手入れもバッチリで、とてもADには見えませんが、ADです。
残業になったため、迎えに来ていた彼氏の津田信二(白石隼也)は彼女に会うことを断念します。その手には婚約指輪が(伏線1)。
ちなみに信二は小説家志望(伏線2)で、ADと結婚とか生活が困窮しそうなのが目に見えますね・・・。
ともちん、残業して映像の編集をしているところに電話がかかってくる。
青年が怪死した事件を取材して欲しいと言われるが、報道部には誰もいないのだが(そんなことあるのか!)、電話主もとにかくカメラ持って現場に行けと指示してくるので(そんなことあるのか!)、ともちんカメラを持って現場へ。
そこでは、アパートの階段で息絶えた青年の死体が。
ともちん、体の小ささを利用して警察の規制線ギリギリの位置をキープし現場を撮影。そしてそのままなぜか現場でリポート!
ありのままを伝えただけだったのだが、それがなぜか報道部に評価される。
報道部から、死体は体がねじれていて(伏線3)、口の中には大量の泥が詰まっていたらしいということを聞く。死因は転落死ではなかったのだ。
なぜかその後の取材もすることになったADともちん、現場のアパートに行くと、この青年の彼女、和世(入来茉里)と会う。
和世について部屋にはいると、部屋中がガムテープで目張りされていることに気づく。
そして、和世から、青年は「のぞきめ」に呪い殺されたことを告げられる。
さらに、和世が青年の部屋で目張りが取れていたシンクの排水口を除くと、そこから大量の泥が逆噴射!泥まみれになった(という幻覚を見た)和世は半狂乱でいなくなってしまう。
ともちん、和世が忘れた上着を届けに和世の実家へ。
和世は部屋に閉じこもって出てこなくなってしまっていた。
和世も自分の部屋を目張りしていたのだが、カーテンの隙間がはらりと開いてしまい、そこには血走った2つの目が!悲鳴を聞いたともちんは和世のお母さんと和世の部屋へ。錯乱した和世はそのまま病院へ行くことになる。
どうでも良いけど、ともちんに和世のお母さんに、「いや、全然」とかタメ口で話しているのに違和感。一応社会人でしょ?
ともちんが和世の大学に聞き込みに行くシーンもあるのだが、同級生にしか見えない。
薬で落ち着いた和世から、青年と一緒にサークルの合宿で謎の村に行ったことを告げられる。群馬か長野あたりにあるその村は今はダムに沈んでいるはずの廃村だった・・・。
ともちんは信二と一緒にこの廃村に向かう。
そばにあるペンションで宿泊するのだが、そこの人がつぶやきシローで独特のなまりが意外にもマッチしていました。つぶやきシローが言うには、問題の廃村の方に向かう峠には地元の者は決して近づかないと。もし行く気ならうちには泊まらないでくれ、と言われる。
そう言われたら行きたくなるので、峠に行くと、廃村のあった場所はダムになっていた。仕方なく引き返そうとしたともちんだったが、信二は「絶対に振り向くんじゃない!」と言います。そう言われると振り向きたくなるので振り向いたともちん、そこにはお遍路みたいな格好をした少女が・・・。
ともちんと信二は、のぞきめの伝説を書いた怪異現象の作家・四十澤(吉田鋼太郎)を訪ねます。
のぞきめとは、かつて六部と呼ばれた巡礼者がいて、各地の霊場をまわっていたのだが、その六部が路銀のために訪れた先で殺されたものが怨念となったものだそうで、ただひたすら、どこかから覗いてくる、というものだった。
ん?あれ?最初の彼、思いっきり泥詰められて窒息させられてたよね?
ただ覗いてるだけじゃないね!
調査の帰り道、和世の母から和世が病院からいなくなったと電話が入る。和世は病院内でまたのぞきめを見てしまい、病院を飛び出したのだ!
病院内のスタッフ的な人たちが一切止めないのも不思議だが、和世はどんどん人気のないところへ逃げていく。
いかにも何かでそうな森に逃げ込んだ和世、しかし落ち葉の隙間から大量の血走った目に見つめられ錯乱する。
たまらず道路に飛び出した和世、そこに信二の運転する車が鉢合わせ、あわや轢きそうになる。
と思ったら次のトラックにあっさり轢かれる!
ショックで仕事が手に付かないともちん、上司に「もう、お前今日は帰れ。」と言われて素直に帰る。
しかもまだ職場にいるのにその場で彼氏に電話をかける。
あんたホントに社会人?
合鍵で信二の家に入るともちん。
すると台所の戸棚に隙間が。
そこを開けると、バラバラになった和世の死体が!
そこは血走った2つの目じゃないんかーい!
パルァララララァ!(ともちんの悲鳴)
謎の変化球に驚いていると、信二が帰ってくる。
落ち着きを取り戻したともちんだったが、信二が大量に買ってきていたのは、ガムテープだった。
目張りする気満々だということに気がついたともちんは信二に部屋を追い出される。
部屋の中から聞こえる信二の断末魔!
ドアを開けてとドンドン叩くともちん!
あれ?合鍵は?きっとパニックで動転していたんだろう。
彼氏を助けたいともちんは、再び四十澤の元へ。
そこで四十澤が若かりし頃、今はダムに沈んだ廃村で「六部殺し」の伝承を調査しに行った時に、この村を牛耳っていた一族が六部殺しの首謀者だったこと、その呪いを沈めるために生け贄代わりの少女を社の奥の洞窟に閉じ込めていたこと、そして、四十澤がこの少女を村の外に連れ出したことを独白します。
四十澤はこの生け贄を逃がしたものの、自分ものぞきめに取り憑かれてしまいます。その恐怖から逃れるために自分の両目を潰したことも告白します。これ「ボイス」でもあったね。
ちなみにこの時、峠にあった道祖神のしめ縄が切れ、石が真っ二つになっています。呪いが解き放たれた!というビジュアルなのですが、四十澤以来、和世と青年、信二と、被害報告は4件ぐらいですね。
結局どうして良いかわからなかったともちん、信二の見舞いに病院へ。
すると、信二が通風口の隙間を覗いたところ、血走った2つの目が!
錯乱して暴れる信二を病院スタッフをなだめようとする。
いや、なだめる前に鎮静剤とか打てよ!
スタッフの静止を聞かず、信二は割り箸で両目を突き刺す!
フィラァララァラァ!(ともちんの悲鳴)
あの状態なのに隔離病棟じゃなかったのか、周りにものありすぎじゃないのか、とか疑問はさておき、信二は失明してしまう。
病院のロビーで悲嘆にくれるともちん。
ロビーの自動販売機のお釣りとるところを見たところ、血走った2つの目が!
「もう、何なのよぅ!」
逆ギレしたともちんに、2つの目は「助けて・・・」とかすれ声を発する。
この言葉を聞いたともちんは再び廃村を尋ねることに。
途中、四十澤の家で廃村に行く旨を伝えると、四十澤は、村の生け贄が持っていた首飾り的なお守りを渡してくれます。
生け贄はかつて四十澤が村でのぞきめに襲われた時に、このお守りで助けてくれたのだった。お守りをかざすとのぞきめの幻影が消えるのだった。って、これもうこの子、ただの生け贄じゃないね!
村に向かおうとするともちんに手を振る四十澤。
なんだか目に見えている風だけど、気にしない。
村に向かう途中の峠、六部のいでたちをした少女に遭遇する。
ともちん、少女に向かって、「わたしがあなたをカメラに撮って存在をしらしめる!それがあなたたちの望みでしょう?」と高らかにカメラをかかげる!
気がついたらともちんはダムに沈む前の廃村にいた。
六部の母子が村の長らしき人に宿代わりとしてお社を提供されているところだった。
夜になると、村の長、謎の装束に蝋燭を頭につける出で立ちで襲い掛かってくる!あんたは八つ墓村か!
六部の母親、少女をなんとか逃がすも自分は斧でめった打ちにされる。
少女、血だらけの母の姿を見て泣き叫ぶ。
母親、息も絶え絶えに(てゆーか、まだ生きてたのか)、娘のほうを振り向こうとすると、体がねじれてしまう!(伏線3回収)
ちなみに原作では、生き埋めにされた娘を助けようと必死で体を動かしたせいでねじれてしまうという設定なのですが、映画ではビジュアル的なインパクトを重視した結果、娘がノーダメージの状態なのに無理やり振り向こうとするということになっています。
だって、地中でやっても目立たないからね!
返す斧で少女も血祭りにあげられる。
そして死体は隠蔽のために地中に埋められてしまいます。
ともちんは、こうして六部の、のぞきめの埋められている場所を知ったので、ちょっと掘ってみたら遺体がみつかったので、そこにお守りを置く。
あれ?カメラで撮るっていうのは?
まあ、これで無事に成仏してめでたしめでたし・・・とはなりません!
地中から少女の手がボコっと出てきて、ともちんの腕を掴んだ!
プルゥウララァアアアー!(ともちんの悲鳴)
ともちんは地中に引きずり込まれてしまいます。
場面は変わって、本屋さんへ。
そこでは、「のぞきめ」というタイトルの本がベストセラーとして並んでいる。
作者は、三津田信三!!!
信二が生きていて、奇跡の盲目作家としてデビューしていたのだ!(伏線2回収)
しかもペンネームが作者自身!
津田信二+三嶋彩乃=三津田信三!!!
むしろこれが一番衝撃でした!
家に戻る信二、いや信三。
原稿執筆の途中で机の引き出しを開けると、そこには彩乃に渡しそびれた婚約指輪が。
するとそこに何か気配が。
現れたのは、ともちんだ!
ともちんはのぞきめになってしまったのか?
「そ~れ~、い~つ~くれるの~?」というのぞきめの呪いとは全く関係ない私怨の催促をして映画終了(伏線1回収)。
いやー、すごい映画でしたね。
というわけで、どうしてこうなった!という問題点をいろいろ挙げてみたいと思います。
1. 彩乃の行動規範がはっきりしない。
彩乃はADで制作部にいるんですが、ひょんなことから、というか報道部がもぬけの殻になっていたので、不可解な事件を取材に行きます。まあ、そのときは非常時だったと解釈できるんですが、なぜその後も(仕事そっちのけで)取材を続けているのかがわかりません。
それならば、彩乃が本来は報道部に行きたかったのに、会社の都合で制作部にいる、みたいなのを強調すればよかったのに映画では描かれておらず、信二との電話で、信二が「やりたかった仕事なんだろ?」って言うだけで、それではテレビ局なら何でも良いという印象になります。
2. のぞきめのスタイルがはっきりしない。
四十澤によれば、のぞきめは「ただじっと見つめてくるだけ」のはずなんですが、最初の青年は泥で窒息死させられてしまいます。
なぜ物理的な攻撃をしてきたのか?
しかも物理的な攻撃はその1回と最後にともちんが地中に引きずり込まれるだけなので、それなら完全に取っ払ってしまったほうが良い。
3. 誰ものぞきめの仕業と疑っていない。
和世がともちんに「彼が死んだのはのぞきめの呪いのせいだ」と言って以来、ともちんと信二はそこについて疑いを持ちません。
むしろのぞきめのせいだと決めつけて行動しているフシがあります。
もちろん、目の当たりにしていない和世の母とか和世や信二の病院にいる人などのその他大勢は信じていないかもしれませんが、主要人物が疑いを持たないので「のぞきめ、本当にいるんだ」というスタンスで映画は続いていきます。
これは、2の問題点ともかぶるのですが、最初の青年を単なる転落死にしておけば、「不可解な死」ではなく、事故か自殺と捉えられるが、ともちんは和世から聞いた話で「のぞきめの呪い」と考える、そしてジャーナリズム魂に火がついて調査に乗り出す、とした方が自然な展開になります。
4. 板野友美はどうなのか?
演技力ももちろん褒められたものではないのですが、自分がいちばん気になったのが、ネタバレの部分にも書いた「悲鳴」なんですよね。
ちょっと面白おかしく書いたフシはありますが、でもそれに近い音に聞こえて、悲鳴というよりは何かの効果音?みたいな印象は拭い去れませんでした。
そして、やはり役どころの問題も大きかったですね。
オシャレでネイルも完璧、というスタイルはどう見てもADには見えません。
AKB関連で言うと、前田敦子の「クロユリ団地」、ぱるること島崎遥香の「劇場霊」も見ましたが、前者は介護士を目指している学生、後者は舞台女優と自身のイメージとキャラクターにそこまでの乖離はなかったのですが、本作はイメージとかけ離れすぎているため、違和感がありまくりでした。
本作のレビューを見ると、板野友美のファン以外で絶賛しているというのはほぼありませんでしたし、どちらかと言うと酷評寄りの評価が中心です。
そういう酷評レビューの時に見かけるのが、「見なければよかった」「時間とお金のムダ」みたいなコメントがあるのですが、自分は全くそうは思いません。
ツッコミどころ満載と割りきって面白く見ることもできますし、こうしたらよかったのにといろいろアイデアを創出することもできますし、何より、これだけ長いレビュー(ネタバレ)を書きたいと思わせてくれるぐらいの勢いはありました(笑)。
なので、もし映画見に行って純粋に面白くなかったと思った時は、発想の転換をしてみることをオススメします!
散々書きすぎたので、最後に良かった点も少々。
物語の下地となる六部殺しの伝承というのは実際にあったそうです。
それから、誰かに見られているかもしれないという違和感や恐怖はおそらく誰しもが持っているもので、それを対象にしたということは良かったと思います。もしかしたら原作のほうがこれらの雰囲気が出ているのかもしれませんね。