
(公式HPより引用)
[story]
人口の爆発的増加に伴い、人類はコケと“ある生物”を送ることで火星を地球化させようとした。この火星移住計画から500年、2599年に計画の仕上げのために15人の隊員が火星へ送り込まれたが、“ある生物”は人型に異常進化した凶暴な驚愕生物へと姿を変え、隊員たちに次々と襲いかかってくる。しかし、この隊員たちも秘密裏の手術によって昆虫のDNAを媒介して虫の姿に“変異”し、超人的なパワーを発揮できるようになっていた。小町小吉(伊藤英明)を中心とする15人の隊員たちと、異常進化しテラフォーマーと呼ばれる謎の生物との壮絶な戦いが始まった!だが、その裏で、もうひとつの陰謀が着々と進んでいた・・・。
作:貴家悠、画:橘賢一にによる同名コミックを、三池崇史監督が実写映画化したのが本作です。
原作コミックは、2013年版『このマンガがすごい!』オトコ編で1位を獲得するなど評判の原作のようですが自分は未読の状態で鑑賞しました。
ちなみに映画では原作コミック1巻の内容を描いているようです。
人気コミックの実写映画化といえば、2015年に良くも悪くも話題をさらっていった「進撃の巨人」がありますが、本作はそれに勝るとも劣らない前評判を誇っていました。
まあ、良い意味でも悪い意味でも。
具体的に言うと、
1. 原作では多国籍なのに、映画では無理やり日本人にしてしまっている。
2. そもそも日本映画のSFアクションなど見るに耐えない。
3. マンガ、アニメで十分なのに、なぜ実写化したのか?
4. 予告編を見た感じ、絶望しかない。
こんなところでしょうかね。
1はまさに「進撃の巨人」でも言われていたことですが、日本人に置き換えたことより、そんな名前の日本人などいない!という理由でリヴァイはなかったことにしたのに、エレンやアルミンはそのままの名前だし、シキシマという謎キャラ出したりといった後付けてきな言い訳がよくなかった印象です。
「テラフォーマーズ」は原作未見なので(よく考えたら「進撃の巨人」も映画鑑賞時は原作読んでませんでした)キャスト面の違和感などはよくわかりませんが、国際情勢的な問題がからみ合って隊員たちの間で対立が生まれたりする部分が全員日本人では全く活きてこないため、行動理念そのものが揺らいでしまうという問題点につながっています(あれ?「進撃の巨人」よりも致命的?)。
2はこれまた予算的な問題もあるしハリウッドの大作と単純に横並びで比較できない現状はあるとは思いますが、「進撃の巨人」に関してはビジュアル的な迫力は十分だったと思います。後編で巨人がやたらと過疎ってることぐらいでしたかね、問題は(大問題?)。
「テラフォーマーズ」では昆虫のDNAでブーストした半虫半人みたいなキャラクターはビジュアル的にはそこそこ面白いけれど、アクション的な面白さでいうとそこまでではなかった気がしますね。
3は人気コミックの宿命のようなもので原作ファンにとっては複雑でしょう。
原作とかけ離れすぎると原作ファンからブーイングをくらい、かといって原作に忠実すぎると実写映画化する意味合いが薄くなってしまうというある種のジレンマ状態になります。
「進撃の巨人」では原作、アニメと評判が良く、ハードルがかなり高い状況での実写映画化ということで、制作陣が言い訳めいたコメントをしたくなるのも仕方がないかもしれません。
一方、「テラフォーマーズ」は原作はともかくアニメの段階での出来に疑問符だったということで、実写映画化を挽回のチャンスと捉えるか、失速した状態での発進と捉えるか、これまた微妙な立ち位置になってしまったのかもしれませんね。
三池監督はそんなの気にしてないと思いますけどね・・・。
4は「進撃の巨人」は前評判ほどは悪くないのでは?という印象でした。ハンジ役の石原さとみのぶっとんだキャラに引っ張られた感もありましたけどね。
「テラフォーマーズ」は、予告を見た瞬間、やばい予感しかしませんでしたね。
しかもだいぶネタバレしてしまっている上に、予告が流れた期間が長すぎたために、見ている側も辟易してしまうレベルでした。
と考えていくと、「進撃の巨人」以上に厳しいスタートを切りそうな「テラフォーマーズ」ですが、はたして。
「テラフォーマーズ」は地球の人口が爆発的に増加してしまったことにより、新たな移住先として火星をコロニーとする計画が持ち上がり、コケと“ある生物”を火星へ送ります。公式HPを見ると、やがてテラフォーマーと呼ばれるこの生物をやたらとぼかしているんですよね。
ビジュアルとしては出まくっているし、予告編にも登場するし、本編でもすぐに名指しで呼ばれているのに。
これ、前回の「アイアムアヒーロー」の記事で書いた日本映画におけるゾンビ以上にかたくなに存在を隠しているので、それほどまでのタブーということなのか、それとも「ハリー・ポッター」シリーズのあのお方みたいなものなのか、単に明示すると初見の人が毛嫌いしそうだからなのか。
レビューを書くにあたって、原作1巻だけ読んでみました。
原作でもはっきりこの生物について言い切っちゃってます。
まあそもそも火星移住計画そのものからしてツッコミどころ満載な気もしますが、これは原作と同様ってことで映画だけの問題ではありませんでした。
この計画から500年たち、時は2599年!
計画の仕上げとして15人の隊員が火星に送られることになる。
この15人は何やらワケありクセありなキャラが揃っているのですが、火星についてみるとそこには、テラフォーマーと化した"ある生物"が!
面倒くさいので言っちゃいますけど、あの生物ってゴキブリね。
酸素を作るためのコケとコケを繁殖させるためにゴキブリを送ったってのが500年前の計画です。それがゴキブリの生命力が強すぎて異常進化しちゃったっていうね。
コケはともかくなぜゴキブリを選んだのかが謎すぎるんですが、そこで突っ込んでたらお話始まらないから割愛です。
15人の隊員は火星移住計画の実験を握る 本多博士(小栗旬)の策略によって火星に連れてこられたのだった。
しかも異常進化したテラフォーマーに対抗するために人体改造をされており、昆虫のDNAをブーストすることで特殊能力を発揮できるようになっていた!
この15人の隊員も犯罪者だったりチンピラだったり、あるいはお金に困っていたりなどのいわくつきな人物ばかり。
役者名、DNAを配合された昆虫の種類とともに紹介しますと、
小町小吉(伊藤英明) ・・・オオスズメバチ
妹的存在の奈々緒を守ろうとした際の殺人容疑で逮捕されたところを本多博士に拾われる。刑罰を逃れるのと引き換えに計画に参加する。
秋田奈々緒(武井咲) ・・・クモイトカイコガ
自分を救ってくれた小吉を死刑にしないために計画に参加。
武藤仁(山下智久) ・・・サバクトビバッタ
元キックボクサー。自分より強いものがいるのが許せない。小吉にやたらと絡んでくるが、生きる目的も喜びも失っている男。やたらと英語を使うがなぜかは不明。
蛭間一郎(山田孝之) ・・・ネムリユスリカ
病気の母親と幼い弟妹がたくさんいる貧しい家庭を支えている。大学で研究をしていたが教授にはめられクビに。お金を稼ぐために計画に参加。天才ハッカーでもある。
ゴッド・リー(ケイン・コスギ) ・・・ミイデラゴミムシ
元テロリスト。紛争地帯で戦っていた不死身の男。純粋な日本人だがなぜかゴッド・リーと呼ばれている。
森木明日香(菊地凛子) ・・・エメラルドゴキブリバチ
元警官。押収した金に手を出したために、クビになる。
元ヤクザの隊員と対立する。
大迫空衣(篠田麻里子) ・・・クロカタゾウムシ
元少女売春組織のリーダー。嫌らしい目線で迫ってくる手塚を最初は煙たくあしらっていたが、やがて・・・。
連城マリア(太田莉菜) ・・・ニジイロクワガタ
空衣とともに売春組織を運営していたロシア人。
手塚俊治(滝藤賢一) ・・・メダカハネカクシ
若い女性、とりわけネイルに目がないサイコ・キラー。
吉兼丈二(渋川晴彦) ・・・ゲンゴロウ
ヤクザ。
虎丸陽(黒石高大) ・・・オケラ
ヤクザ。
総田敏雄(青木健) ・・・瞬殺されるため不明。オニヤンマか?
ドレッドヘアのテロリスト。
町岡隆太(長尾卓也) ・・・瞬殺されるため不明。マイマイカブリか?
テロリスト?
大張美奈(小池栄子) ・・・ハナカマキリ
バグズ2号の副艦長。昔付き合っていた男のせいで火星に送り込まれた。
堂島啓介(加藤雅也) ・・・パラポネラ
バグズ2号の艦長。上司を殴って一度はクビになりかけるが、火星に行くことを条件に隊長として復職する。テラフォーマーの存在を最初から知っていた様子。
という15人でした。うん、ツッコミどころあるね。
彼らが昆虫のDNAを注入して、半昆虫化してテラフォーマーと戦うわけですが、実は、「その裏で、もうひとつの陰謀が着々と進んでいた」(公式HPのSTORYより)
それは書いちゃうんかい!ある生物はやたらと伏せているくせに!
というわけで、テラフォーマー退治すら知らされていなかった隊員たちですが、さらにその裏で陰謀も渦巻いているようです。
一体誰がそんな陰謀を?裏で糸を引いているあやしい奴は一体誰だ?
その正体はぜひ劇場で笑。
とまあ世界観からキャラ設定からストーリーから何から何までツッコミどころ満載という気がしないでもないですが、本作の感想をまとめると以下の様な感じになります。
1. 出オチ映画である。
予告編での武井咲のシーンもそうですが、本作はとにかく出オチが多い。
上記の隊員で瞬殺されたと書いていない人でも思いの外あっさりと死んでいきます。
代表的なのが、ケイン・コスギ扮するゴッド・リー。
テラフォーマーと最初に直接的に対峙するのは彼ですが、元テロリストで不死身の男+昆虫DNAによるブースト=最強!→あっさりやられました。というコンボが決まります。
他のキャラも昆虫DNAによる特殊能力で見せ場を作る→やられる、という感じで映画から退場していきます。
他にも、テラフォーマーに宇宙船が攻撃された時も、「この宇宙船の装甲は破られることはない!」→ダメでした、とかとにかく煽った2秒後にはオチが来ます。
ただ、これも割りと原作通りで、それに三池監督流のエッセンスが加わった結果みたいですね。そもそも砂漠が舞台になっているのに埼玉県とテロップ出したりする人だから驚くことはありませんね。
2. キャストのみんな、どうした?
本作を見て最初に思ったのが、伊藤英明ってこんな演技下手だっけ?ということ。
「海猿」も確かにベタなキャラではありましたが、それでも演技下手という印象には直結しませんでした。
武井咲がテラフォーマーに襲われて、「なにすんだてめー」と言うところが代表的で、これ見ただけで映画の出来が心配になります(的中です!)。
そして、本多博士を演じる小栗旬ですが、もはや1周回って楽しくなっちゃってるのかな?とすら思わせてくれる演技、というよりキャラでした。原作ではそこまで誇張されていないので映画オリジナルのキャラ作りということになります。
実写版「ルパン三世」といい、酷評必至な作品に出続けているのは勇気なのでしょうか?
それに対して、山Pこと山下智久は本作では非常に頑張っています。
なぜだかは語られないが、伊藤英明扮する小吉に対抗意識を燃やしたり、
なぜだかは語られないが、武井咲扮する奈々緒のことをちょっと気に入っていたり、
なぜだかは語られないが、生きる希望を失っているという・・・。
このあたりはキャラの背景が語られないことにも起因します。
計画に参加する理由が示されるのは、小吉と奈々緒、あとは山田孝之扮する一郎ぐらいで、他は口頭でさらっと言われる程度か役どころからお気づきでしょうというレベル。
山Pにいたっては語られてすらいなかった気がします。
自分より強い奴がいるのが許せないっていうドラゴンボール的理由ということにしておきましょう。
と思っていたら原作ではこの厨二病的な設定の背景も描かれていました。映画ではそれがないので終盤にいきなり絶望しだしてどうしたの?状態に。
3. 世界観もなんだか・・・
地球は人口の爆発的増加により貧富の差が激しくなり、住む場所もなくなってきたので、火星移住計画がスタートするのですが、退廃的な世界を描いただけで、この説明が感じられるシーンはほとんどありません。
一郎の家だけやたら貧乏描写がはっきりしていますが、2599年なのに昭和臭溢れる描き方でした。
もちろん尺の問題もあるのでしょうが、ひさや大黒堂の「ぢ」の文字ばかりが目立つ退廃的な東京は、どう見ても「ブレード・ランナー」の世界観をモロパクリしているだけといった印象を拭えません。
とまあ、気がついたら否定的な面ばかりピックアップしてしまったかもしれませんが、昆虫のDNAによりブーストするシーンは好みはあると思いますがそれなりです。
その時に、その昆虫の特徴と能力を解説してくれます。
ナレーションは池田秀一で渋目の声での説明は魅力的です。
邦画アクション大作としてはともかく、戦隊モノのノリで見に行く分には問題ないできだと思います。
お時間のある方はぜひどうぞ!
お忙しい方はこの記事読んでもらえればだいたい見たみたいなことになりますので大丈夫ですよ笑。