「日本で一番悪い奴ら」感想。


(公式HPより引用)

[story]
柔道の腕っ節を買われて北海道警察に入ることになった諸星(綾野剛)。正義感を持ちながらも思うような成果を挙げられずにいた。あるとき、先輩刑事の村井(ピエール瀧)に、「刑事は点数を稼いでナンボだ。裏社会に飛び込んでS(スパイ)を作れ。」とアドバイスされた諸星は、その言葉通りに裏社会に没入していくが・・・。

数々の違法捜査や麻薬の密売、所持、使用などの容疑で逮捕された実在の元警部・稲葉圭昭の告白本「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」を、「凶悪」の白石和彌監督により映画化。

「凶悪」に引き続き、犯罪がテーマとなっていますが、どす黒い人間の闇を描いた前作と比べると、本作はなんとも明るい雰囲気になっています。
犯罪そのものというよりは、諸星という男の栄光と挫折を描いた物語といった方がしっくりくるかもしれません。
手段の選ばなさ、その後の破廉恥なまでの豪遊などの姿は、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の世界観に近いかもしれません。

諸星は大学で柔道でならしてきた身で、それがきっかけで北海道警察に見初められてそのまま働くことになります。
柔道で鍛えた精神と正義感を持って北海道警察に入りますが、気持ちだけではなかなかうまくいかず、先輩には邪魔者扱いされ、デスクワークを押し付けられる毎日。

そんな時、先輩刑事の村井(ピエール瀧)に、「刑事は点数を稼いでナンボだ。そのためには裏社会に飛び込んでS(スパイ)を作れ。」とアドバイスされます。

そこから諸星は自分の名刺を大量に作って、水商売の人たちやチンピラなど裏社会に関わりがありそうな人たちにバラ撒きます。
ムチャクチャなやり方なので、当然おらついたチンピラたちから目をつけられますが、何と言っても柔道日本一だったので、向かってくる奴全部投げ飛ばしていくうちに、じわじわと認められるようになってきます。
そして、チンピラの情報でアニキ分の麻薬所持の噂を聞いた諸星は、礼状も取らずにガサ入れをします。
そこで、大量の麻薬に加え、違法拳銃も発見した諸星は、警察で表彰されることになります。

ここから先は諸星のステップアップが描かれていきます。
ガサ入れしたチンピラのいる暴力団の若頭・黒岩(中村獅童)にも気に入られ、やがて、山辺(YOUNG DAIS)、ラシード(植野行雄)らをSにし、ロシアから違法に輸入されてくる銃を取り締まることに成功します。

一方、クラブの高級ホステスを彼女にしたり、新人の婦人警官と関係を持ったりと、女性関係もウハウハな状態になっていきます。

期待の星として、次々と違法拳銃を検挙する諸星、そしてその彼の手腕や成果を持ち上げつつも、いいようにつかっている道警上層部は、その状況がどんどんエスカレートしていきます。
そして、銃撲滅の大義名分のもとに、ついには違法行為にまで手を染めてしまうという泥沼に陥っていきます。

描いている題材は警察の腐敗そのものですし、人によっては胸糞悪い映画という印象が否めないかもしれませんが、本作は、諸星という1人の男の生きざまにスポットが当てられているので、優れたドラマ性を有しています。

諸星は、やり方こそ間違っていたけれど、正義感に溢れ、さらにはSとなった黒岩や山辺、ラシードらの面倒見もよいという一貫した人間性を持っています。
彼らの身を最後まで案じていたり、自分を使い捨て同然の扱いをした道警の上層部を密告したりすることがなかったのです。

序盤にはチンピラになめられないために、飲めない酒やなれないタバコを吸って虚勢を張るなどの人間味を感じさせるところもあります。
また違法捜査にどっぷり手を染めていた頃に入ってきた新米刑事の言葉に心動かされたりもしています。
そして終盤に地方に飛ばされた時の不良少年に投げ飛ばされた時の悲哀感の漂う表情もまた切なく感じます。

これは諸星役に体当たりで挑んだ綾野剛の功績が大きいでしょうね。
出始めの頃は雰囲気だけの俳優さんかと思っていましたが、ここにきてメキメキ頭角を表してますね。
共演陣も素晴らしく、いかにもな先輩刑事のピエール瀧、そして元ヤクザのS黒岩に扮する中村獅童などの実力どころはもちろんですが、同じくSのYOUNG DAIS、「TOKYO TRIBE」に引き続き作品の重要な役どころを等身大で演じています。

特筆すべきはもう一人のS、ラシードに扮するデニスの植野行雄ですね。
本格的な役者としての仕事は初めてかも知れませんが、ほとんど素?なのか役柄に完全に入り込んでいます。
彼らの存在もまた映画の魅力の一因となっていますね。

諸星は、柔道でならしておりそれで北海道警察に入ることが出来たということで、組織に対して恩義を感じていたのでしょう。
体育会系ということもあって、先輩を敬う気持ちが人一倍強かったことも考えられます。

だからこそ、もし諸星が成果主義や組織の方針に従わずに、自分のモラルやポリシーを曲げずにいられるのであれば、と思うと、彼もまた被害者であるとすら思えてくるのです。

実録犯罪モノという体なので敬遠している人も多いかもしれませんが、1人の男の生き様を追った物語として、見どころ十分な一本です。
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「帰ってきたヒトラー」から考える後知恵バイアス


「帰ってきたヒトラー」では、タイムスリップしてきたヒトラーが、最初は単なるモノマネ芸人と思われていたのに、その話術と演説によって徐々に民衆の心を掴んでいく様をシニカルなコメディーとして描いています。

これは移民問題や経済格差などに揺れる現代のドイツにおいて、確固たる意志や信念を持った指導者が望まれていることの皮肉でもあるのですが、もし、モノマネ芸人ではなくヒトラーが本物であると認識していたら同じことになるでしょうか?
もっと言えば、第二次大戦当時に、ヒトラーが独裁者として世界を敵に回した暴走を始めることが分かっていたら、当時の民衆は支持したでしょうか?

今にして思えば、「なぜあんな独善的な支配者を民衆は支持したのか?」と疑問に思うことでしょう。

Fishhoff & Beyth(1975)は、アメリカで当時の大統領だったニクソンが、冷戦状態だった中国を訪問するか、毛沢東との会談は実現するか、アメリカは中国を承認するか、といった項目について、その実現確率を推定してもらいました。
ちなみにこれらはいずれも1972年に実現しているのですが、その後に、実現可能性をどれぐらいだと見積もったかを思い出してもらったところ、3/4の人が、事前に見積もった割合よりも高い値を答えました。

つまり、実現した事実として認識することで、過去の推定や判断の正確さを高めに見積もったということになります。

このようにすでに発生した事象について、事前に予測や推定が実際よりも正確であったと解釈する傾向があることを、後知恵バイアス(hindsight bias)と呼びます。

さらに、Fischhoff(1975)では、1814年に起きたイギリス-グルカ戦争の記述を読ませて、その後に実際にどうなったと思うかの確率を見積もってもらうという課題で、一方のグループには、結論を明示せずに予測してもらい、もう一方のグループには、「双方とも停戦には合意したものの、和平協定を結ぶには至らなかった」という結論を明示してから予測してもらいます。
すると、当然といえば当然ですが、事実と一致した結果を予測することになりますが、この時に、「もしこの結論を読んでいない人が、最終的にどうなったかを推測するとしたら、その確率はどうなりますか?」と聞いた場合においても、事実と一致した結果になる確率を高く見積もるということが示されました。

つまり、一度事実として知ってしまったことで、一般的で常識的な判断もそれに従うものであると解釈されていることになります。
逆に言えば、事実を知ってしまったあとでは、そこから大きく逸脱した予想や推量はできなくなってしまうということです。

この後知恵バイアスは日常のいろいろな場面で現れてきています。
たとえば、ギャンブルなんかもそうです。
結果を知った後で、「これは的中できたはずなのに。」と思い込むことはないでしょうか?
今世間ではポケモンGOが話題となっていますが、それに伴い任天堂の株価が2倍の価値に跳ね上がっていますが、株を購入していない人に限って、「上がると思った~」なんて捨てゼリフをはいたりします。
スポーツ番組で解説者がドヤ顔で「自分は試合前からそう思っていた」という発言をするのもまたしかりです。

このことは他人に対しても当てはめてしまうので、失敗した人に対して、「失敗すると思った」とか「なぜ事前に予測できなかったのか」とか思い込むのもこの後知恵バイアスの影響だったりします。

ヒトラーも彼やナチスドイツの所業を事実として知っているからこそ、「そんな独裁者を支持するのはおかしい」と言えますが、これが当時の1ドイツ国民として判断するのは極めて難しいということが、この後知恵バイアスからも説明できますね。

[引用]
Fischhoff, B. (1975). Hindsight is not equal to foresight: The effect of outcome knowledge on judgments under uncertainty. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 1, 288-299.

Fishhoff, B., and Beyth, R. (1975). I knew it would happen: Remembered probabilities of once future things. Organizational Behavior and human Performance, 13, 1-16.

「帰ってきたヒトラー」感想。


(公式HPより引用)

[story]
第二次大戦時に死亡していたはずのヒトラー(オリヴァー・マスッチ)が、突如として現代のベルリンにタイムスリップしてよみがえる。彼を見つけたフリーのTVディレクター・ファビアン(ファビアン・ブッシュ)は、追跡ドキュメンタリーを作ることにする。それが話題となり、テレビ番組に出演、かつての演説を髣髴とさせる話術は、いつしか大衆の支持を集めることになるが・・・。

もしもヒトラーが現代によみがえったら?
このシニカルなパラレルワールドを描いたティムール・ヴェルメシュによる同名小説の映画化です。

この設定と予告編を見ただけでも十分に面白いことが想像できます。
またこの映画以前に、日本ではすでに総統閣下シリーズこと、「総統閣下は○○にお怒りの様子です。」と言う動画が普及しております。
これは、おなじくヒトラーの姿を描いた傑作「ヒトラー ~最期の12日間~」(本作にも一瞬出てきます)に、適当な字幕を当てているいわゆるMAD動画と呼ばれているものの1つですが、内容が映像の雰囲気とセリフに絶妙にマッチしているのが面白いです。

本作はまさにそのMAD動画を地でいくような部分もあって、非常に楽しみにしていました。

あらすじとしては、序盤は現代にタイムスリップしたヒトラーが70年もの時代の変化によるジェネレーション・ギャップを感じさせるような部分を描いています。
予告編にも出てきているメールアドレス取得のシーンはその象徴でしょう。
自分の名前、アドルフ・ヒトラーでメールアドレスを取得しようとしたら、「そのアドレスはすでに使用されております。」と出るあたりの面白さですね。

そんなヒトラーの姿を追うのが、フリーのTVディレクターのファビアン。
ヒトラーのそっくりさんだと思い込んだ彼は、彼の振る舞いをカメラに収め、自分をクビにしたテレビ局の副局長へと送ります。
最初は軽視していた副局長も、この動画がyoutubeで莫大な再生数になっていることを知ると、看過できなくなり、人気コメディー番組へのキャスティングを決定します。

ここでヒトラーは長い沈黙の後に、ナチス党時代を髣髴とさせる演説を打つわけですが、これが観客や一般聴衆に「受けて」しまうわけです。
日本でもキャラを作りこんでいる芸人はたくさんいますが、本作のヒトラーもまさにそのように捉えられてしまいます(作りこみは完璧ですけどね)。

結果、高視聴率も獲得し、やり手の局長は次々とヒトラーを番組に出演させます。
ヒトラーはそれらの番組を通じて、自分の持論を展開していきます。
例えば、「薄型テレビを作ったように高い技術力を持っているのに、そこで放送されているのは料理番組や低俗でくだらない番組ばかりだ。」と叱咤し、現在の政党の主義主張が生ぬるいと次々と論破していく様は、「言いたいことを言ってくれた!」と清々しさすら覚えてしまいます。

と表向きは、「もしヒトラーが現代に蘇ったら?」というファンタジーを具体化したコメディー作品なのですが、その背後には不穏な空気も漂っています。
その部分について以下に書いていきたいと思います。

1. ヒトラー、ナチスドイツが政権を握るまでの過程をトレースしている

ヒトラーのキャラクターはその発言もあいまって大衆に受けいられていくのですが、メディアを掌握したのは当時のナチスドイツそのものです。
ナチスドイツ支配下のメディアにおいて、直接的に洗脳するような映像を流したわけではなく、通常のドラマの悪役をユダヤ人にやらせるなどの間接的な手法で、「ユダヤ人は悪人だ」という印象を植えつけたのです。
経済格差、移民問題などに揺れているドイツにおいて、過激ながらも明確な姿勢を打ち出す姿がカリスマ性のある指導者として捉えられる可能性もあるというのは、まさに当時のナチスドイツの台頭を彷彿とさせています。

2. ヒトラーの状況把握能力

ヒトラーは70年後の現代にタイムスリップしてきて、最初こそ、その事実に気がついた時に卒倒していますが、それ以降の状況把握能力がハンパありません。
身を寄せた先が新聞を売っているキオスク的な売店だったこともあり、すぐに現在のドイツの政治、経済、領土、他国との関係性などを把握していきます。
そして、終盤には当時にはなかった技術、インターネットやSNSをも使いこなすようになっていくのです。
これによってより多くの人に自分の主張を拡散することが可能になります。このような技術のなかった第2次大戦下においてもあれだけの支配力を誇っていたのですから、もし現代のツールがあったらと考えるとそら恐ろしい話です。

さらに劇中では、本作の原作を書いたのがヒトラー自身ということになっています。
これは、ヒトラーが、「自分はタイムスリップしてきた本物であるが、民衆はそのことに気がついておらず、モノマネ芸人だと捉えられている」ことを自覚していることを示しています。

このように本作はコメディー映画の体でありながら、現代の世相をえぐりつつある種の扇動者によって再び国を左右されかねないことを示唆しているとも言えます。
世界的に対テロの先の見えない戦いが続いている中、アメリカのトランプ候補のように過激ながらも行動力、指導力を持ったリーダーが望まれるようになりつつあるのかもしれません。

とまあ、コメディー映画で鋭い風刺という視点は素晴らしいのですが、終盤の描き方が少し雑だった印象もありました。
終盤は、この原作が映画化される、ということを映画内で表現しているため非常にメタ的な目線になっている上に、劇中劇のキャスト(ヒトラー以外は別の役者がやっている)が絶妙に本人と似ているのもあって、紛らわしくなっています。

原作未読なので、これが原作通りの展開なのかはわかりませんが、ヒトラーの再来が脅威であることに気がついた、というのをもう少し前面に押し出した方が良かった気がします。

とはいえヒトラーが劇中劇において言う以下の言葉にはとても説得力があり、それゆえこの映画の中での未来に不穏な空気を感じさせる要因となっています。

「わたしは独裁者かもしれないが、その独裁者を選んだのはお前たち民衆だ。」

世界史上に名を残している独裁者は数多くいますが、ヒトラーは当初は民主主義の名のもとに、正当な選挙によって国民の投票で選ばれたということです。
そしてこの映画のような状況が現実であれば、さらに、ヒトラー本人ではなくとも第2のヒトラー、第3のヒトラーが現れたら、と考えると戦慄を禁じえません。

ものすごいヘビーな映画のように書いてきてしまったので、もう1ヶ所面白いシーンを。
副局長がテレビ局を取り仕切りだしたら、番組の視聴率が下がってしまったことに対して、副局長はまわりのスタッフたちを叱責します。
このシーンは、この記事の最初に書いたMAD動画にもなっている「ヒトラー ~最期の12日間~」とよく似ています。あわせてご覧になるとさらに楽しめると思います。

もう少しコメディー要素に振り切った上で上記の展開があれば文句なしだったのですが、それでも設定や構成、映画のテーマなど見どころが多い作品でした。

「心霊ドクターと消された記憶」から考える虚偽記憶



「心霊ドクターと消された記憶」では、主人公の精神分析医ピーターが自分の元を訪れた少女のメモから、事の発端が自分の故郷で起きた列車事故にあるということに気がつき・・・という展開になっていくのですが、この肝となる列車事故についてピーターはその詳細をほとんど覚えていませんでした。

事故や災害、戦争や犯罪に巻き込まれるといった自分の命を脅かすような強烈な情緒体験をすることで、様々な心理的、機能的障害がもたらされることを、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder, PTSD)と言って、日本では阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件、JR福知山線脱線事故などの大規模の災害、事件、事故の際に広く知られるようになっています。

PTSDの症状としては、不安、不眠といった日常的なレベルのものから、物事に対する興味関心の極端な減衰、幸福感や将来への展望などの喪失などのうつ的傾向、そして原因となった災害、事件、事故に対する追体験(フラッシュバック)や、事件前後の記憶の喪失、忘却、想起の回避傾向などが挙げられます。

ピーターも少年期に列車事故を目撃したことで、PTSDの症状が現れているとも解釈ができます。

確かに、人の記憶とは曖昧なもので、自分もすっかり忘れていたり抜け落ちていたりする記憶はたくさんあります。
(映画もたくさん見ていますが、時間が経つと詳細を結構忘れているということは良くあります。)

しかし、PTSDのように精神的ショックの強い体験でもない限り、別の記憶が入れ替わってしまうなんてことはなかなか想像できないでしょう。
実際に起こってはいない、実際にはなかった出来事についての記憶のことを虚偽記憶(false memory)と言いますが、今回はこの虚偽記憶について紹介したいと思います。

Loftus & Pickrell(1994)では、ショッピングモール迷子実験によって、人に虚偽記憶を植えつけることが可能であると示しています。
この実験では実験参加者の家族や親戚から、実験参加者の幼いころのエピソードを3つ、あらかじめ聞いておきます。
その3つの真実のエピソードに加えて、1つ、虚偽のエピソードを加えておきます。それが、「小さい頃にショッピングモールで迷子になった。」というものでした。

これらの4つのエピソードに対して、どれぐらい記憶しているかを確認すると、最初の頃は、ショッピングモールで迷子になったという虚偽記憶については、実験参加者は「ほとんど覚えてない」と回答します。
しかし、その後、周りの親族や知り合いから、「あの時はすごい泣きわめいていて大変だった。」とか「親切なおばあさんが見つけてくれたんだよ。」といった当時の情報を追加されると、実験参加者は、次第に「なんとなく覚えている」と思うようになり、やがて、「あの助けてくれた人は最高にクールだった!」などと自分でも情報を追加するようになりました。

最後に、実験参加者に、「実は今回伝えた4つのエピソードの中に、事実じゃないものがある」と伝え、どれが虚偽のものであるかを判断させると、ショッピングモールで迷子になったエピソード以外の、本当にあったはずのエピソードを虚偽のものだと回答する割合が高くなったということです。

この実験結果は、裁判における証言や警察の取り調べにおける自白などの信ぴょう性にも影響を与える結果となり、大論争となったそうです。

ただし、この実験結果は、幼少期の思い出を思い出してもらうというもので、実験参加者からすれば10年以上も前のそもそもあやふやな記憶をたどるというものでした。「心霊ドクターと消された記憶」のピーターも、少年期の記憶ということでほとんど覚えていなかったというのも頷けます。
それでは、大人になってからでは物事を正確に記憶できているのでしょうか。

Edelson, Sharot, Dolan & Dudai(2011)では、実験参加者に警察の逮捕の様子を描いたドキュメンタリーを見てもらい、3日後に内容の記憶テストに回答してもらいます。その4日後、再び集められた実験参加者は、他の人の回答をフィードバックとして与えられて、その後に改めてドキュメンタリーの内容の記憶テストを実施すると、70%近くの回答がフィードバックに従ったものとなりました。
ただし、これらのフィードバックは全くのデタラメで、記憶テストの内容は先日行われたときには正解していたものにも関わらず、フィードバックによってデタラメの回答の方に引き寄せられたことになります。
さらに数日後、再び実験参加者が集められ、先日のフィードバックは他の人の回答ではなく、コンピュータでランダムに作られたものだと教えた上で、再度記憶テストを行ったところ、40%ほどの回答がフィードバック後に誘導された虚偽記憶と一致したものになっていました。

この結果から、記憶は同じ状況を目撃したり体験したりした人の意見に引っ張られやすいこと、一度ゆがんでしまった記憶は元に戻りにくいことが示されています。

Rajagopal & Montgomery(2011)では、実験参加者を2グループに分け、一方のグループにはポップコーンの新商品の広告として、文章のみを提示(イメージ低群)し、もう一方のグループには、リビングで人々がポップコーンを美味しそうに食べているシーンを描写したものを提示(イメージ高群)しました。その後、それぞれをさらに2群に分けて、一方のグループにはこのポップコーンの試食をしてもらい、もう一方のグループにはポップコーンとは無関係の別の課題を行ってもらいました。

1週間後、ポップコーンの試食をしなかった人たちに、「ポップコーンの試食をしたか」を質問すると、イメージ高群の方は、実際に試食した人と同じぐらいの割合で、「試食をした」と回答しました。さらに、このポップコーンに対する評価も、実際に試食をした人たちと同じぐらいに高くなっていました。

このように、イメージのしやすさや具体性によっても記憶は操作されるということが分かります。

ちょっとした思い違い、記憶違いならばいいのですが、これが「心霊ドクターと消された記憶」のピーターのように一生悩んでしまうような問題であったりする場合もあるわけです。
さらに怖いのは、自分でも気がつかないうちにコントロールされている可能性もあるということですね。

完全に正しく記憶を保つということは非常に難しいのですが、とりあえずは記憶は曖昧なものでちょっとしたことで変容してしまうことを自覚しておくのが一番の予防とも言えるでしょう。

[引用]
Edelson, M., Sharot, T., Dolan, J. R. & Dudai, Y.(2011). Following the Crowd: Brain Substrates of Long-Term Memory Conformity. Science, 333, 108-111.

Loftus, E. F. & Pickrell, J. E.(1994). The formation of false memories. Psychiatric Annuals, 25, 720-725.

Rajagopal, P. & Montgomery, N. V.(2011). I Imagine, I Experience, I Like: The False Experience Effect. Journal of Consumer Research, 38, 578-594.

「心霊ドクターと消された記憶」感想。


(公式HPより引用)

[story]
娘を亡くし悲しみに暮れる精神分析医のピーター(エイドリアン・ブロディ)。普通の日々を取り戻すべく徐々に面談を再開したある日、エリザベス・ヴァレンタイン(クロエ・ベイリス)という患者ではない少女がやってきて1枚のメモを残していく。そのメモを調べていくと、自分の患者たちの奇妙な共通点に気づいてしまう。全員、1987年の7月12日にピーターの故郷で起きた列車事故で亡くなっていたのだ。亡霊たちに導かれ、ピーターは20年間封印されてきた秘密を解き明かしに故郷へと向かう・・・。

失意の精神分析医が巻き込まれる衝撃のスペクター・ミステリーとの触れ込みで公開されたのが本作です。
スペクター・ミステリーはジャンルとしては聞き馴染みがありませんが、スペクター=亡霊ということで、スリラー要素のあるミステリーということですね。
まあ、「シックスセンス」的なアレね。

邦題から、「鑑定士と顔のない依頼人」や「記憶探偵と鍵のかかった少女」あたりが思い起こされるんですが、作品の系統としては、「記憶探偵~」よりですかね?
オカルト寄りのミステリーといった様相です。

娘を亡くしたことで悲しみに暮れていた精神分析医のピーターですが、ようやく通常の日々を取り戻すべく、面談を再開します。
しかし、ある不思議な少女がやってきて、超常現象と1枚のメモを残します。

ここからは彼の元を訪れるこの少女と患者たち、そしてこのメモは何なのか?というミステリー的な展開になっていきます。
そこで、彼の患者が全員同じ日に亡くなっていることが判明します。
その日に何があったのかを探るため、彼は自分の故郷に帰ることにします。というのが前半ですね。

後半には、この故郷で何があったのか、なぜ自分はそのあたりの記憶が抜け落ちているのか、それを探っていく過程になります。
ただ、ミステリーというよりは彼の周りに現れる亡霊たちが次々と教えてくれるといった形なので、あまり謎解き感はありません。
このあたりはもう少し詳細を丁寧に作れば良かったと思うんですが、割りとあっさりと真実にたどり着いてしまいます。

90分と尺が短いこともあって、良くも悪くもあっという間の映画だったという印象です。

「シックスセンス」の大ヒットを受けて、それ以降こういった衝撃のサスペンス・ホラーみたいなものが雨後のたけのこのように続々と量産されましたが、当のM・ナイト・シャマラン監督作も含めて、同じようにはいかない印象です。
邦題ですでにだいぶネタバレしているのも痛いですね。

雰囲気は非常に良いので、何も考えずに見たら案外拾いものといった印象を受けると思いますので、特に見るもの決めずにDVD借りに行った時に見つけたら、そこそこ評価できるのではないでしょうか?

「クリーピー 偽りの隣人」から考えるサイコパス

Trolley problem

本作「クリーピー 偽りの隣人」でも題材になっていますが、サイコパスと呼ばれる「異常犯罪者」を題材にした映画やドラマ、小説は数多くあります。

もっとも代表的なものが、「羊たちの沈黙」ですかね?
アカデミー賞作品賞まで受賞している作品で、ハンニバル・レクターという猟奇殺人鬼がまさにサイコパスの象徴のように描かれています。

ということで、今回はサイコパスとはなんぞや?という話題をお送りしたいと思います。

まず、サイコパスという言葉は上記のような作品が多くあるため、サイコパス=猟奇殺人者、快楽殺人者のように捉えられている場合が多いですが、決してそうではありません。

サイコパス(psycho-path)は、精神病質の一種で反社会的な人格(サイコパシー)を有する者のことを示しています。
多くの場合、この傾向が極端に強い者をサイコパスとして捉えることが多いので、誤解されやすいですが、あくまで精神病的傾向の1つで、反社会的人格の1つということが重要です。
ざっくり言うと、優しさとか怒りっぽさとかそういった性格次元の1つとして捉えてもおかしくはないようなものなのです。

サイコパス診断というものがネット上にはたくさんあって、そのほとんどがいわゆるサイコパス=犯罪者として捉えているのですが、心理尺度としては、Hare(1991)によるサイコパシーチェックリストが有名です。
以下に記載しますので、自分がどれぐらい当てはまるか、回答してみてください。

サイコパシーチェックリスト
(あてはまる:2点、ややあてはまる:1点、あてはまらない:0点で回答)

1. 口達者で表面的には魅力的である。
2. 自己中心的で、自尊心が強い。
3. 病的に嘘をつく。
4. ずるく、人を操ろうとする。
5. 後悔したり、罪悪感を感じない。
6. 感情が浅い。
7. 冷淡で人に共感しない。
8. 自分の行動と責任を結び付けられない。
9. 退屈しやすく、刺激を求める。
10. 寄生虫のように他人に依存して行動する。
11. 欲望を抑えるのが苦手
12. 性的に乱れた行動をとる
13. 現実的・長期的な計画をもとに行動できない
14. 衝動的に行動する
15. 責任を取ろうとしない(ルールを知っていながら守らない)。
16. 少年・少女時代から犯罪歴がある。
17. 幼児期から問題行動が多い。
18. 保護観察・執行猶予期間の再犯がある。
19. 短期間に数多くの結婚・離婚歴がある。
20. 多様な犯罪歴がある。

このテストにおいて、30点を超える場合、サイコパス的な傾向が強いと判断できるそうです(ちなみにわたしは3点でした)。

ただ、先ほども書きましたが、あくまで、サイコパスは性格特性の1つとして、反社会的な面を持っているということなので、この得点が高い=犯罪者では決してありません。

ダットン(2013)では、サイコパス度が高い職業として、以下の10の職業を挙げています。

1. 企業の最高経営責任者
2. 弁護士
3. テレビ&ラジオ関係
4. セールス
5. 外科医
6. ジャーナリスト(新聞や雑誌記者)
7. 警察官
8. 聖職者
9. シェフ
10. 公務員

共通していることとしては、リスクや状況判断をする機会が多い、高度な会話スキルが要求される、ある種のカリスマ性がある、といったところでしょうか。

対して、サイコパス度が低い職業として、以下の10の職業を挙げています。

1. 介護士
2. 看護師
3. 療法士
4. 職人
5. 美容師/スタイリスト
6. 慈善活動家
7. 教師
8. アーティスト
9. 内科医
10. 会計士

こちらは対人というか人のために尽くすことが仕事になっているといったところでしょうか。外科医はサイコパス度が高い方に入っているのに、内科医はこちらというのも興味深いですね。

さらにダットンは、歴史上の人物や小説・映画のキャラクターについても、その関係者や知人などの詳しい人に評価してもらったところ、ヘンリー8世、アドルフ・ヒトラーなど、歴史上の暴君とされる人は確かに上位に来ましたが、キリストや聖パウロなどの聖人、さらにはシャーロック・ホームズやジェームズ・ボンドもやや高いという傾向があったそうです。

また、ダットンはサイコパス度と関連のある能力を調べるためにいくつかの実験を行っていますので、それを紹介します。

1. 赤いハンカチの実験

実験参加者の前を、5人の人が通過します。この時、5人のうちの誰かがこっそり赤いハンカチを持っています。参加者には誰が赤いハンカチを持っているのかを当ててもらうというものなのですが、結果は、サイコパス度が低いグループの正答率は30%だったのに対し、高い人のグループの正答率は70%だったそうです。

2. 表情を読み取る実験

実験参加者には、表情(目の当たりのアップ)の写真を見せて、その人がどんな感情を表しているかを予測してもらったところ、やはりサイコパス度が高いグループのほうが正答率が高かったそうです。

3. トロッコ問題

倫理学の思考問題として有名かと思いますが、以下の様な問題です。

(A) ブレーキの効かないトロッコが走っており、このままだと先で作業をしている5人が犠牲になってしまう。今、あなたが目の前にある切り替えレバーを入れれば、トロッコを別路線に誘導することができるが、そうするとこの別路線で作業をしている1人の作業員が犠牲になってしまう。この時、あなたはレバーを入れるか、入れないか。

(A)の場合、レバーを入れるという回答が多くなる傾向になります。5人の命を救うために1人を犠牲にするという選択になります。

ここで問題を以下のように変更します。

(B) ブレーキの効かないトロッコが走っており、このままだと先で作業をしている5人が犠牲になってしまう。今、あなたは橋の上におり、目の前に太っている人物がいる。この人物を橋から突き落とせばトロッコを止めることができるが、この太っている人物は犠牲になってしまう。この時、あなたはこの人物を突き落とすか、突き落とさないか。

(B)の場合、先ほどの(A)とは逆で、突き落とさないという回答が多くなる傾向になります。
助かる人数、犠牲になる人数の構成は同じであるにもかかわらず、このように判断が変わってくるのには、自分がその行為に直接的に関わるか否かが影響していると言われています。

つまり、(A)の場合は自分がレバーを入れることで直接関与するのはトロッコを別路線に導くことで、その結果として1人が犠牲になるのは副次的なものであるという解釈が成り立つのですが、(B)の場合、直接犠牲となる人物に手を下すということで、自分が積極的かつ能動的にこの人物の命を奪うことになるという解釈が成り立つからこそ、その判断を躊躇してしまうことになります。

長くなりましたが、サイコパス度が高い人は、この設問において、(A)の場合も(B)の場合も、すぐに1人を犠牲にして5人を助ける選択をする傾向が強いようです。

これらの結果をまとめると、サイコパス度が高い人は、観察力、洞察力に優れており、微妙な表情の違いもうまく認識できます。さらには、冷静かつ合理的な判断を素早く行うことができるとも言えます。
先ほど、サイコパス度と職業の関連について記述しましたが、そういう職業の人がサイコパス度が高い、というよりは、サイコパス度が高い人ほど、観察力、洞察力、判断力が備わっているため、上記のような職業に適性があるとも言えます。

サイコパス、と聞くとどうしても半社会的なイメージが強く出てしまいますが、その能力の中には極めて重要なものも存在しています。
それらの能力をうまく活かせるような環境や状況、職業に身を置くということが重要になってくるわけですね。
「クリーピー 偽りの隣人」でも、西野が警察官だったら、様々な事件を解決する優秀な刑事になっていたのかもしれませんね。

[引用]
ケヴィン・ダットン(2013). サイコパス 秘められた能力. NHK出版.

Hare, R. D.(1991). Manual for the Hare Psychopathy Checklist-Revised. Multi-Health Systems.

「クリーピー 偽りの隣人」感想。


(公式HPより引用)

[story]
犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)は、刑事時代の後輩・野上(東出昌大)から、未解決の一家失踪事件の分析を依頼される。一家で唯一の生き残りの長女・早紀(川口春奈)の聞き取り調査をするも事件の核心には迫れずにいた。一方、高倉が妻・康子(竹内結子)とともに新しく引っ越した先には奇妙な隣人がいた。病弱な妻と娘・澪(藤野涼子)と一家の主人・西野(香川照之)との何気ない会話に翻弄され、高倉夫妻は困惑する。ある日、澪が告げた言葉に高倉は困惑する。「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」。
一家失踪事件と隣人一家の不可解な関係。高倉が2つのつながりに気づいた時、康子の身に「深い闇」が迫っていた・・・。

第15回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝いた前川裕の原作「クリーピー」を、「トウキョウソナタ」「岸辺の旅」の黒沢清監督が映画化。

原作は未読ですが、ミステリーとして絶賛されていたようで、タイトルはなんとなく記憶していた程度でしたが、原作者は大学教授だそうで。
ただ、比較文学が専門とのことで、心理学ではないようですね。

本作のタイトル、クリーピー(creepy)は、気味が悪い、不気味な、という意味で、虫がモゾモゾと這いまわって動くような不快感を指します。
creepyで検索したらgoogleのイメージ検索でサムネイルですでにクリーピーな画像が出てきてしまってゲンナリでした。

さて、そんな映画を撮らせたら右に出るものがいない、黒沢清監督によって、何気ない日常の風景でも不気味で不穏な雰囲気が全開だということは予告でもヒシヒシと感じられていました。
その根源とも言えるのが、主人公の高倉の家の隣りに住む西野に扮する香川照之。彼の怪演がまさにこの映画そのものと言っても過言ではないほどの不快感を感じさせる役柄を飄々と演じています。

というのは、まあ良いのですよ。
他のキャストもそれなりに良いのですよ。
そりゃ、「MOZU」のコンビじゃねーか、とか、「ストロベリーナイト」じゃねーかとか、いろいろありますよ。

ただそれ以上に気になる問題点が多々ありましたので、今回もまたネタバレ全開でお送りしたいと思います。
未見の方で、これからの鑑賞を楽しみにしている方は、ぜひご鑑賞後に改めて御覧ください。


↓↓↓ネタバレ注意!↓↓↓

高倉(西島秀俊)は、犯罪心理学に長けた刑事で、この日も留置中のサイコパスに面談を行っていました。このサイコパス、松岡は、これまでに8人を殺害した男で、高倉は松岡の精神構造を知るためにいろいろと聞き取りをしますが、「自分にはモラルがある」というだけでめぼしい情報は得られません。
なんとか留置期間を伸ばそうと後輩の野上(東出昌大)を説得している隙に、松岡はフォークで監視の警官を殺害して脱走、さらには居合わせた女性を人質に取ります。
野上をはじめ、警官たちは松岡を取り囲み銃を構えます。
そんな彼らを制し、一人で松岡に近づく高倉。

「お前にはモラルがあるんだろう?」と問いかけながらフォークを奪おうとする高倉に対し、「自分を信頼できるなら背を向けることができるはずだ」と言い返す松岡。
その言葉どおりにゆっくり背中を向ける高倉。

ブスリ!

刺されたあー!
さらには人質も殺されたあー!!
松岡は野上らによって蜂の巣にされたあー!!!

松岡の捨てゼリフ「どうですか?俺のモラル?」が虚しく響き渡ります・・・。

というのが冒頭のシーンですが、すでにツッコミどころ満載過ぎました。
このシーンは、それまで自信に満ち溢れていた高倉が自信喪失するシーンとして入れたかったのだと思うのですが、あまりにも突飛すぎたのが問題でしょうね。

場面は変わって、高倉は大学で講師をしています。専門は犯罪心理学。高倉は妻の康子とともに東京の郊外に引っ越しをします。愛犬のマックスも連れて心機一転、今度は家族ともしっかりと時間を過ごそうと決意したのです。刑事時代に家族をないがしろにしてたっていう話は一切ありませんでしたけどね(察しろ、ということですね、分かります)。

高倉夫婦はご近所に引っ越しの挨拶に周りますが、2軒隣の田中家では、「うちはご近所付き合いとかしてないのよ。」と冷たくあしらわれてしまいます。すると部屋の奥から、

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

とうめき声が聞こえてきます。
田中家は寝たきりの母親を介護しているとのことでした。

次に隣の西野家に行くも不在のようで、なんだか出鼻をくじかれたような形でこの日は家に戻ります。

次の日、康子が再び西野家を尋ねインターホンを押すもやはり反応がなかったので、引っ越しの挨拶の品を門扉にかけて帰ろうとすると、家から中年の男性・西野(香川照之)が出てきます。

西野「なんですか?」
康子「昨日隣に越してきた高倉です。」
西野「だから、それ、なんですか?」
康子「あ、チョコレートです。」
西野「ああ、チョコレート!1粒で1000円とかするのありますよね?ああいうのですか?」
康子「い、いえ・・・」
西野「あ、そうですか・・・」
康子「」
西野「チョコレート、嫌いじゃないですよ。」
康子「はぁ・・・」
西野「お宅、犬、飼ってます?犬も好きですよ~。」
康子「はい。あでもしつけはきちんとしてますので。」
西野「え?犬にしつけするんですか?・・・いいと思いますよ~。」

康子、答えに窮していると、西野、無言で家に戻っていきます。

もう、この会話のやりとりからして、あからさまにおかしすぎるんですよね~。せっかく田中家との対比で描ける部分でもあるし、日常的な部分を強調したほうが良いと思うんですが、もうすでに異常性がにじみ出ちゃっている感じでした。

帰宅した康子は、なんとも言えない気持ちになって、とりあえず田中家から突き返された引っ越し挨拶のチョコレートをゴミ箱に叩きつけます。

帰宅した高倉に康子は、「(西野は)感じの悪い人だった。なんか変人っていうか、取り付くしまがないというか・・・」と感想を言うと、高倉は、「だいたい凶悪犯は近所の人に愛想がいいから、(そういう意味では)安心かな?」と言って一笑します。

高倉は大学の研究室で手持ち無沙汰にしています。
助手の大川に向かって、「大川くん、大学の先生って授業じゃない時は何してるの?」みたいにのんきに問いかけると、「研究とかっすねー。」と言われます。
え、高倉は普通に常勤の先生なの?

警察で連続殺人鬼を野放しにした挙句、2人も犠牲者出した上に犯人も射殺するっていう最悪の不祥事を招いておいて、のうのうと大学の先生になれるものなの?
もちろん、かつての刑事としての実績を買われてのものだろうし、何しろ原作者が現役の大学教授なので、全くない話ではないのかもしれませんが、非常勤とかにしておいた方が、失意の感じが出やすいと思ったんですけどね。

大川は過去10年に東京近郊で起こった事件をプロットしているのを見た高倉は、そのポイントを指差すと、大川がそこで起こった事件について説明してくれます。

高倉「ここは?」大川「◯◯事件、もう解決してますね。」・・・みたいなのを繰り返して、最後に指した場所でおこっていたのが、「日野市一家失踪事件」でした。
この事件は、6年前に両親と長男の3人が行方不明になったもので、唯一残されたのが当時中3だった長女、早紀でしたが、彼女の証言があやふやだったために未解決となったままでした。

大川は高倉を連れ、日野市一家失踪事件の本多一家が住んでいた当時の家にやってきます。
中にはいろうとする大川を、高倉は「これ以上介入すべきじゃない。」と制します。

一方、康子がマックスを散歩しがてらゴミ捨てに行くと、そこに現れた西野にマックスがじゃれつき、西野は転倒してしまいます。
西野は、「犬は好きなんですけど、どう扱っていいものか・・・」と照れます。
さらに、先日の対応が無愛想だったことを康子に詫び、さらにはチョコが手作りだと分かって、美味しいとも言ってくれたので、西野の印象を改めることとなります。
そこに、西野の娘・澪(藤野涼子)が戻ってきて、仲睦まじい姿(澪は露骨に嫌がっている気もするが)を見ると心を許した康子は、「今度は奥様もいっしょに・・・」と声をかけるのですが、西野は急に真顔に戻り、「どういう意味です?」と言ってきます。

大学の高倉の元に刑事時代の後輩だった野上がやってきます。
野上は、高倉が日野市一家失踪事件の現場に訪れたことを知っており、解決のための助言が欲しいと言ってきます。

なぜ知った!

それは置いておいて、ここで冒頭のシークエンスの問題が出てきますね。
高倉があれだけの大問題を起こしながら逃げるように警察を辞めているのに、野上はそこについて特に触れるでもなく、普通に捜査の協力を頼みますかね?
もちろん早紀が当時の捜査で根掘り葉掘り聞かれた挙句、証言としての価値がないと無碍にされたことで、警察に対する不信感を持っているから、警察じゃない人を立てる、という発想は分からないでもないですが、やはり、普通に丁寧にお願いするのは違和感を感じます。
それまでに高倉の優秀さを描いておくか、高倉と野上の関係を明示しておくか、そうでないなら、野上もやむにやまれず高倉にお願いしているというスタンスが必要です。

高倉と野上が日野市の本多家を訪れると、そこに一人の女性がいました。その女性こそ本多家で唯一残された長女の早紀(川口春奈)でした。高倉は、自分は警察ではなく大学教授であると告げ、何か助けが必要になったら知らせて欲しいと言います。

帰宅する途中、高倉は西野に会います。そこで、西野は、
「あなたの奥さん、どうしたんです?根掘り葉掘り聞かれて迷惑してるんです」と詰め寄ってきます。
ちなみにこの時、高倉と西野は初対面です!
帰宅した高倉はこのことを康子に伝え、「あんまり関わらないほうがいい。」といいます。

早紀から、当時の記憶を断片的に思い出したとの連絡があったので、高倉は野上とともに早紀に聞きこみをします。というかもはや尋問でしたけどね。場所こそ高倉のいる大学ですが、研究室は真っ暗で、そこで追い詰めるかのように質問をし続けます。

そこで早紀が語ったのは、
「事件の直前に両親と兄が接していたのは同一人物かもしれない。」
「母はその人物と接して、楽しそうだった時もあれば、怯えているような時もあった。」
「当時高校生は、真面目だったのにある時、見知らぬ相手(同一人物?)に酒を飲まされて帰ってきたことがある。」
「早紀はその人物を部屋の窓から見たことがある気がする。」

というものでした。
ただ自分の妄想かもしれないとも言うのです。

・・・

だいぶ具体的!
証言としての価値がないとされた当時の証言はどういうものだったかわかりませんが、これに近いものだったら警察ももう少し捜査しようよ!
不可解な事件なら近所への聞きこみぐらいするんじゃないの?

高倉は、野上に当時本多家の隣りにあって、今は空き家となっている水田家を調べさせます。
すると、押し入れの中から、布団圧縮袋に入った5人の遺体が発見されます。6年も経過しているのにハエがたかっているのはどうかと思いますが・・・。

この5人は本多家の行方不明になっていた3人と水田家の2人であることが判明しました。
ここにきて6年間未解決だった日野市一家失踪事件が急展開を迎えるのですが、水田家の2人も殺されていたため、早紀が目撃したのは水田ではなかったということになります。
これが真犯人だったのか?いや、誰だろう?全然想像もつきませんねー(棒)

その頃、康子は西野家にビーフシチューをおすそ分けに行きます。
さっき高倉にあまり関わるなって言われたばかりなのに!
自分も若干気味が悪いと思っていたのに!
その時に、西野に家に入るよう言われますが、なんだか気味が悪いので遠慮していると、西野は、「あなたの旦那さん、素晴らしい方ですね。あれはモテるでしょう?」と唐突に言ってくるので、気持ち悪さ倍増した康子はそのまま家に戻ろうとします。
すると、追いかけてきた西野が、自分の妻がうつ病で悩んでいることを告白します。
康子は、そのせいで西野の態度がおかしいのだと、極めて好意的に解釈します。

高倉が帰宅すると、家では康子が澪と一緒に料理を作っています。康子が澪に料理を教えているところで、西野も家に来ていました。一応もてなす態度で接する高倉でしたが、西野が働いている雰囲気がないので、いろいろと質問をすると、株式関係の協会理事をしていると答え、ますます怪しみます。

別の日、高倉は西野と電車で偶然居合わせます。
この時の西野はお年寄りに席を譲ったり、騒いでいる子どもたちを見て苦笑いしたりしています。
帰りが一緒になった高倉は西野から、かつては出版社の営業をしていて、高倉の勤める大学の事務の竹内さんとも仕事をしたことがあると言ってきます。

康子が帰宅すると、マックスがいなくなっていることに気がつきます。
マックスを探しに行くと、公園で西野と一緒にいて、西野の弁では、マックスを見かけたので保護したとのことでした。
西野に心を許しかけるのですが、

「奥さんじゃなくて、康子さんって呼んでいいですか」
「康子さんも、もっと自由に走り回りましょうよ」
「ご主人と僕と、どっちが魅力的ですか」

と、次々と気持ち悪いこと言ってくるので、ドン引きします。
はずなのですが、この後、康子と西野は徐々に距離を縮めていきます。

高倉が帰宅すると、そこに澪も帰ってきます。
そこで、澪は、

「あの人、お父さんじゃないです。全然知らない人です」

と告白します。
これは予告でもさんざん流れていますし、公式サイトでもキャッチコピーばりに出ていますし、そもそもサブタイトルが「偽りの隣人」だしで、わかっていたことですが、

そうだったのかーーー(棒)

高倉はそのことを詳しく聞こうとしたところで、西野と康子、マックスが戻ってきたので、聞けずじまいになります。

ある日、高倉がリビングで日野市一家失踪事件をノートにまとめていると、いつの間にか康子がいなくなっていました。
康子は階段で誰かに電話していたのですが、高倉が問い詰めると、「誰だっていいでしょ!」と突然激昂します。
最初は面食らった高倉でしたが、新しい環境に慣れないせいだと思いこみます。落ち着いた康子は、昔の友人と電話していたのだと言います。
この後に康子がミキサーをかけるシーンがあって、そのゴリゴリとしたサウンドがなんとも不穏です。

高倉がマックスを散歩している時に、高台から自分の家(と西野家、田中家)の方を眺めると、日野市の事件の本多家、水田家と配置が似ていることに気がつきます。
3軒並びで1軒だけ少し内側にあるコの字型に配置されています。少し内側にあるのが西野家。

・・・

だからどうした!

と思ってしまったのですが、高倉はそれを偶然とは思えなかったので、野上に、西野雅之について調べて欲しいと伝えます。

野上は日野市の事件の捜査で、本多早紀の父親の職業が協会理事であること、さらに西野の調査結果、免許証の写真などを入手し、それを携えてやってきます。

西野家に!

いやまず高倉に言うでしょ!

西野家を訪問すると、西野が出迎えますが、野上は免許証の写真と明らかに顔が違うので不信感を抱きます。
中に入らせてもらっても良いかと聞くと、西野はちょっとお待ち下さい、と言ったまま奥に引っ込んでしまうので、しびれを切らした野上は家に上がり、廊下を進んでいきます。

もうこのあたりで西野家に構造は明らかに普通じゃないのですが、野上は1人で入っていきます。
奥に明らかに異質な金属の扉を見つけた野上はその扉を開け、中に入っていきます。
この部屋、以下、頑丈部屋と呼ぶことにします。

その夜、田中家で爆発が起こります。
驚いた高倉は田中家に救出に向かおうとしますが、再度爆発が起こり田中家は炎上します!
野次馬も出て騒然とする中、高倉が野上家の方を見ると、居間から大音量とともにテレビの光が漏れます。

田中家の現場検証をした谷本刑事(笹野高史)から聞いたところによると、爆発の原因はガス漏れによるもので、3体の焼死体が発見されたとのことでした。2人は田中家の女性と寝たきりだった母親で、もう1人がなんと野上刑事でした。

高倉はこの爆発に対して、隣人の西野が何食わぬ顔でテレビを観ているのはおかしいから調べろ!ということを主張しますが証拠がないので動いてくれません。
いや、それじゃなくて、むしろ野上に西野のことを調べてもらった直後に死んだってことを強調しなさいよ!

野上の捜査内容を知りたくて警察に押しかけて野上のパソコンを見せてほしいと願いでるも部外者なので当然見せてもらえません。てか、このへんの警察の対応がこれまでの流れからすると普通な気が・・・。
ただ、警察自体も野上の動向を確認していないのが謎で、無能すぎる・・・。

結局、証拠は何一つないけれど、この爆発の一件で西野がこの事件、そして日野市の事件の中心にいると悟った高倉は、早紀の元を訪れ、西野の写真を見せます。これこそ目撃した人物ではないのかと。
しかし、早紀は一向に写真を見ようとはせず、強引に見せようとした結果、

「それでもあなたは人の心を持っているんですか!」

と言われてしまいます。

その頃、西野家では、頑丈部屋で澪が意識もうろうとした女性と一緒に、真空パックに包まれた何かを部屋の床下に収納しようとしていました。
この女性は澪の母親・多恵子で、西野によって薬漬けにされていたのです!そしてこの真空パックの中身こそが、本物の西野だったのです!
そうだったのかーーー(棒)。

澪と母親が実の父親を処分しようとしているそばで、西野は、
「澪ー、そろそろ(残高が)やばいんだけどー。」と何食わぬ顔で残高照会しているのはそら恐ろしい雰囲気でした。

ところで全く突っ込んでなかったけれど、西野家のこの100%犯罪者向けに作られた構造はなんだったんですかね?
まさか西野家がそもそもそんな構造だったわけじゃないよね?
西野、ではなく偽西野がリフォームしたのかしら?

その頃、康子は部屋で呆然としていました。
そして外ではたびたび偽西野と会っているようです。

偽西野が頑丈部屋に入っていると、多恵子が注射器を持って襲いかかってきます。なんとか振り払うもその存在が危険だと思った偽西野は澪に、野上から奪った拳銃を渡し、始末するように言います。
澪が躊躇していると、偽西野は多恵子の頭を撃ち抜きます。

そして、

「これじゃ犯罪者になっちゃうじゃないか。全部お前のせい。後始末、ちゃんとやっときなさい」と澪に言います。

澪が母親の圧縮&収納に手間取っていたので、偽西野が助っ人を連れてきます。それはなんと、康子でした。
彼女は澪の母親の死体を見てもらした驚きますが、

偽西野「澪がやった。警察を呼んだら澪が逮捕されちゃう」「元々は康子さんの責任です」と言われ、さらには澪もそれに同意するので、康子は

「わたしはどうしたらいいの?」

ともらします。
彼女も偽西野によって薬漬けにされ、冷静な判断力や思考能力を失っていたのです。

高倉が帰宅すると、そこに澪が駆け込んできます。
高倉は澪に、「(西野は)お父さんじゃないんだな?」と今更感のあることを確認します。
偽西野が追ってくると思った高倉は家の鍵をかけますが、偽西野は最初はドアをドンドンと叩いていただけだったのが、普通に鍵を開けて侵入してきます。
高倉は澪に警察に電話するよう指示しながら偽西野を取り押さえます。
とそこへかけつけるパトカー。
珍しく仕事をしたとおもいきや、澪が、

「わたし、まだ警察呼んでいない。」

と言います。

実は警察に電話していたのは偽西野で、高倉は偽西野に対する暴行容疑で逮捕されてしまいます。
あの状況下で、ろくに確認せずに、現場の保全もせずに、澪はほったらかしで、元同僚である高倉を逮捕する、という無能ぶりをここでも発揮してくれます。

取り調べを受けることになった高倉ですが、そこに谷本刑事がやってきます。
そこで、田中家爆発事件に対する警察の見解を聞かされます。

野上は借金があって、高倉家に無心に行った。

留守だったので、2軒隣の田中家に押し入る。

なんかもう自暴自棄になったので、田中家の2人と無理心中

拳銃は暴力団に横流しした。

えええええええええええええええええええええ!!!!!!

たとえ野上に借金があったとしても、誰がこんなストーリー考えつくんだよ!
これ解釈したヤツのほうがサイコだよ!

しかし、谷本は野上のパソコンを調べたところ、そこには西野雅之を調べた形跡が残っていました。
高倉は谷本とともに、警察に来ていた偽西野を問い詰めようと取調室に行ったところ、不在!

担当の警察官が、

「帰りたいというので、帰したましたよ~。」

とのんきなことを言ってきます。
無能&無能。

高倉と谷本は大急ぎで戻ります。
高倉は自宅へ、谷本は、西野家へ急行します。

高倉家には誰もいませんでした。
谷本は西野家に入り、頑丈部屋に潜入します。
もちろん、一人で!

頑丈部屋の床下収納のところがいかにも色が変わっていて落とし穴っぽいのですが、谷本、なんの躊躇もなくその上に乗ります。

落ちたー!

ドリフか!

床下でもんどり打っていると、そこに手が差し伸べられます。
その手は、偽西野でした・・・。

そもそもこの床下に圧縮された西野夫妻いるんじゃなかったっけ?

もう展開もコントみたいだし、ツッコミどころ多いし、もはやどうしたら・・・。

高倉は西野家に行くと、薬漬けで意識もうろうとした康子を発見します。
「あなたはココにくる必要なかったのに。わたしはとっくに諦めちゃったの。」と心ここにあらずな状態なので、なんとか連れ出します。

と、途中で頑丈部屋の扉に気がつき、(よせばいいのに)その中に入ります。
そこで気を失った谷本を発見したのは良いけれど、康子は銃を持った西野の元へ。
西野が康子に銃を渡すと、康子は無感情にその銃を西野に返します。

自分では一切手を汚さないことを美学としている西野に対し、高倉は、

「サイコパスだ。可哀想に・・・」
「お前の綱渡りもここでおしまいだ!」
「大学の事務を調べたら、竹内という人はホントにいた・・・」

え?ホントにいたの?
これはただの偶然なようですが、西野に不信感を抱いているのなら、なぜ竹内さんに確認しなかったのか・・・?

ともかく、つぶやき戦術で相手の動揺を誘おうとしたら、

プスッ

隣りにいた康子に注射を刺されます!

高倉、失神!

こうして康子とともに高倉も薬漬けにされてしまいます。

しかし、薬漬けにしている間、谷本はどうなっていたんでしょう?
殺されたとしたらなぜ捜査されないのか?
最後の最後まで警察の無能さが目につきます。

偽西野は、澪、高倉と康子、それにマックスも連れて、車で移動します。
そして、つぶれたレストランのところから街を望遠鏡で眺め、

「見つけたぞ、新しい家!」

と皆に言います。
ただ、マックスが邪魔だと思ったので、高倉に銃で撃たせようとします。

銃を渡すと高倉は、

「これがあんたの落とし穴だ。」

と言い、偽西野が撃たれます。
それを見て大はしゃぎする澪。
その姿にドン引きして、高倉は康子を連れてその場を立ち去ります。
康子は半狂乱になって金切り声を上げます。
澪はマックスを連れてお散歩へ。


というわけで、いかがでしたか?

隣人、近所という極めて日常的な存在が恐怖の対象となるというのは確かに恐ろしい話で、ここまでのサイコパスではなくとも、おかしな行動をしたり迷惑をかけてきたりする隣人のエピソードはたくさんあります。
本作もそういう身近ながら得体のしれない存在を描くという点で、描きたいものははっきりしていたかと思います。

ただ詳細や様々な説明を端折った結果、なんとも都合よく展開してしまった感が否めません。
以下、そのあたりの問題点を並べてみたいと思います。


1. 高倉と警察との関係性

高倉は冒頭の事件での大失態により逃げるように警察をやめているわけですが、何のおとがめもなく大学の講師に転身していたり、野上が普通に事件の協力を要請していたりするのは不自然。
しがない非常勤講師なので、捜査協力の報酬もありがたいから手伝う、だったり、警察からは総スカンでも後輩の野上とは良い関係だったりとかそういう設定のほうが、その後の展開の説得力が増すと思います。

2. 高倉夫婦の関係性

高倉と康子の関係も微妙です。警察時代は高倉が忙しさにかまけて康子を放っておいたとかそういった説明はなく、大学講師になって時間があるからちゃんと向き合えるみたいなことになっていますし、その後のすれ違いもなぜそうなるのかが理解できません。
大学講師になる→でも結局事件にのめり込み過ぎて康子を放置、みたいな流れにすれば良かったんですけどね。

3. 康子はなぜ西野に心を許すのか

澪以外で西野と最も接するのが康子ですが、序盤から得体のしれない不気味な存在だと思っていたはずなのに、どこで籠絡されていくのかが不明瞭です。
手作りチョコを褒められる、犬を見つけてきてくれる(ただし自作自演の可能性大)、妻がうつ病で可哀想、これぐらいですかね?
それを補って余りある不気味さなので、これでは難しいでしょう。
2の流れがしっかりした上で、西野が優しく接してくれる、とかそういう展開が必要です。
あるいは無理矢理にでも薬漬けにする流れが欲しかった気がします。

4. 西野が最初からヤバさ全開!

これも3とも共通する部分があるのですが、西野はのっけからだいぶヤバめのキャラです。高倉夫妻は常々そう言っていますし、田中家でも「あれは鬼です、人の心を持っていません」と評されています。
少なくとも序盤は西野はもっと善人として描いておくべきではないのでしょうか?
その西野に疑いを持つのが高倉だけ、という形であれば、刑事時代の失態もあって警察に取り合ってもらえないという展開ともつじつまがあいます。
それから、西野が澪や康子をマインドコントロールするのにももう少し説得力が欲しかったですね。澪(そしておそらく早紀も)は、犯罪の片棒を担がされているという罪悪感と恐怖でコントロールしているというのは良いとして、康子は単に薬漬けというのが腑に落ちません。
香川照之の怪演は素晴らしいですが、キャラにメリハリをつけて欲しかった印象です。

5. 警察の無能さ加減。

冒頭の高倉の大失態もそうですが、本作における警察は全くいいところがありません。

・サイコパス松岡に監視の警官、たまたま居合わせた人質を殺された挙句、松岡は射殺。
・日野市一家失踪事件で3人も行方不明になっているのに長女の証言が曖昧というだけで6年間放置。高倉と野上によって死体は発見されるも事件としては未解決。
・野上、西野に対する調査結果を依頼してきた高倉には一切伝えず、なぜか単身で西野家に乗り込む。薬漬けになっている多恵子と同程度の戦闘力しかない西野にしてやられる。
・野上が縁もゆかりもない田中家で2人の住人とともに亡くなっているのに、超展開の推理で無理心中として片付ける。
・高倉と西野がもみ合っているとこにかけつけ、高倉を傷害罪で逮捕。参考人であるはずの西野を本人が帰りたいと言っていたのであっさりと家に帰す。
・谷本、西野が十分にあやしいと睨んでいる、野上もやられているかもしれないという状況で、なぜか単身で西野家に乗り込む。いかにも落とし穴みたいになっているところに落ちる。
・谷本も行方不明になっているのに、西野家をしばらく放置。

とまあざっとこれだけのことをやらかしております。
この後に、「日本で一番悪い奴ら」を見て、よく警察がこんな映画の制作や公開を許したな~、と思っていましたが、冷静に考えたら本作の無能っぷり全開の描き方を問題視すべきかも、と思いましたね。


だいぶツッコミどころが多すぎた気もしますが、良い点もあるんですよ。

作品全体を通してつねにまとわりつくような不快感、嫌悪感に満ちているのは、黒沢清監督ならではと思いました。
過去の作品でも、昼間なのにどこか夜中のような暗い鬱蒼とした雰囲気が出ていましたが、本作でもその印象は顕著です。

先述した高倉家で、高倉がメモをとっている→いつの間にか康子がいない→電話を問い詰めると激昂する→ミキサー音、という流れのところだったり、トンネルで康子に話しかける西野の姿が暗がりで表情は全く見えない(けれどおそらく不気味に笑っている)だったりと、そういうシーンは事欠きません。

単にこの不気味さ、不穏さだけを味わえれば、この映画としては十分ということなのかもしれません。
細かいことが気にならない人で、そういう雰囲気を味わいたい方にはオススメだと思います。

「貞子 vs 伽椰子」から考えるプラシーボ効果



「貞子 vs 伽椰子」では、ジャパニーズホラー界の2大筆頭の共演ということで、多くのホラーファンのみならず映画ファンが大歓喜したことでしょう。

貞子はビデオを見たものを呪い、伽椰子は家に訪ねてきた人を呪うということで、今回のテーマは呪いについてです。

日本でも古くから、丑の刻参りだったり、不幸の手紙だったりと、呪いにまつわるようなエピソードは数多くありました。
しかし、そんな呪いには本当に効果があるのでしょうか?

Beecher(1955)は、ぜんそく患者に対して症状の緩和効果のない偽薬を投与したところ、患者が主観的に感じる呼吸の困難さなどが、吸入器を当てた時と同じぐらいに改善したということを示しました。
このように、特別な効用のない薬でも、本当に効果のある薬だと思い込むことによって、実際に効果が現れることを、プラシーボ効果(あるいは偽薬効果)と呼んでいます。

このプラシーボ効果は、心理学実験だけではなく、実際の医療現場においても取り入れられ、その効果についての検証も数多くなされています。

1. 思い込みだけではなく、本当に症状が緩和する。

Benedetti(2007)では、患者に痛み止めと称して偽薬を渡して、脳内をスキャンして調べたところ、実際のモルヒネを服用した患者と同様に、痛みを沈静化させるエンドルフィンが分泌されていたとのことです。
プラシーボ効果が脳科学的にも証明されたということですね。

2. 偽薬でもやはり値段は信頼の証?

Waber, Shiv, Carmon, & Ariely(2008)では、電気ショックを与えられた実験参加者のうち、一方のグループには、10セントの痛み止めと言って鎮痛剤を渡し、もう一方のグループには、2.5ドルの痛み止めと言って鎮痛剤を渡し、その効果について違いがあるか調べました。この痛み止め自体は全く同じ偽薬だったのですが、結果は、10セントの痛み止めと思って飲んだグループのうち61%の人が痛みが軽くなったと答えたのに対し、2.5ドルの痛み止めと思って飲んだグループでは、85%の人が痛みが軽くなったと答えたそうです。
値段が高いとそれだけ効果があるという思い込みも強くなるのでしょう。

3. こころの問題では、その効果が顕著に。

Khan, Redding, & Brown(2008)では、2862人の子供を対象にした12の調査を解析したところ、抗鬱剤によって57%の子供が改善したのに対し、偽薬でも49%の子供が改善したそうです。
風邪や病気の症状以上に、考え方や気持ちの影響が強いのかもしれませんね。

4. 偽薬の効果は数年にも及ぶ。

Nickel et al.(1996)では、カナダで2年間に渡る調査を実施した結果、偽薬を投与した303人もの患者において、前立腺の肥大傾向があるにも関わらず、尿の排泄が良くなるなどの症状の改善が見られたことを示しました。プラシーボ効果が持続する要因としては、患者の信念や期待、医者の信念や期待、医者と患者の関係性が重要であるとされています。
やはり、信頼できる医者に処方されてこそ、その薬は効果があると思うのは納得できますよね。

5. 偽薬ではなく、偽手術でも効果がある。

Moseley et al.(2002)では、膝の手術の際に、偽の手術(麻酔をかけ切開するところまでは本物の手術と同様だが、実際の患部への処置などは一切行わない)でも、本当の手術と同様に症状の改善が見られました。また、この偽手術が場面や設定、状況において本当の手術に酷似しているほど、その効果が大きいそうです。やはり思い込みの力が大きいですね。

このように、本来は効用がなくとも、実際に効果が出るということで、プラシーボ効果は、人の思い込みがいかに強力なものかを示していることになりますね。

さて、このプラシーボ効果ですが、これまでの例のように必ずしもプラスの効果として現れるとは限りません。
マイナスの効果として現れるのは、そう・・・



呪いだああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛



呪いもまた、思い込みによる効果となります。
何の効果もない偽薬を、「眠れなくなる薬」だと言われたり、「体がだるくなる薬」だと言われたりして服用すると、やはりそのような効果が現れてしまいます。
このようにプラシーボ効果とは逆に、良くない効果として本当に現れる現象は、ノーシーボ効果(またはマイナスプラシーボ効果)と呼ばれています。

呪いというのも本来は科学的な根拠などない、まさに偽のものなはずですが、人が呪いをかけられたと”思い込む”ことで、その影響が本当に見られるようになるということですね。

日本古来の呪いでわら人形に五寸釘なんてのもありますが、あれはそのわら人形を見た人が噂を広め、それによって自分が誰かに呪いをかけられていることを知ることで、自分の身の回りによくないことが起きた時、それが呪いのせいだと思い込んでしまったということです。

このようにプラスにもマイナスにも影響があるのが人の思い込みということなので、これは偽薬に限らず日々の考え方にも影響します。
普段からポジティブに捉える人は、きっといろいろうまくいくことも多いでしょうし、その逆もまたしかりです。
やはり日々ポジティブ思考でいたいものですね!

[引用]
Beecher, H. K.(1955). The powerful placebo. Journal of the American Medical Association, 159, 1602–1606.

Benedetti, F.(2007). The Placebo and Nocebo Effect: How the Therapist’s Words Act on the Patient’s Brain. Karger Gazette, 69.

Khan, A., Redding, N., & Brown, W. A.(2008). The persistence of the placebo response in antidepressant clinical trials. Journal of Psychiatric Research, 42, 791-796.

Moseley, J. B., O’Malley, K., Petersen, N. J., Menke, T. J., Brody, B. A., Kuykendall, D. H., Hollingsworth, J. C., Ashton, C. M., & Wray, N. P.(2002). A controlled trial of arthroscopic surgery for osteoarthritis of the knee. The New England Journal of Medicine, 347, 81-88.

Nickel, J. C., Fradet, Y., Boake, R. C., Pommerville, P. J., Perreault, J. P., Afridi, S. K., & Elhilali, M. M.(1996). Efficacy and safety of finasteride therapy for benign prostatic hyperplasia: results of a 2-year randomized controlled trial (the PROSPECT study). CMAJ, 155, 1251-1259.

Waber, R. L., Shiv, B., Carmon, Z., & Ariely, D.(2008). Commercial features of placebo and therapeutic efficacy. JAMA, 299, 1016-7.

「貞子 vs 伽椰子」感想。


(公式HPより引用)

[story]
見たら2日後に必ず死ぬという”呪いのビデオ”を手にしてしまった女子大生、有里(山本美月)。彼女は、ビデオの不気味な映像を見てしまった親友、夏美(佐津川愛美)を助けるために、都市伝説の研究をしている大学教授、森繁(甲本雅裕)に救いを求める。森繁のつてでお祓いを受けることになるも、呪いを解くことはできずにさらなる惨劇を招いてしまう。最後の手段としてそこに現れたのは、霊媒師の経蔵(安藤政信)と助手で盲目の少女、珠緒(菊地麻衣)だった・・・。

ジャパニーズホラーの代名詞とも言える「リング」シリーズの貞子と「呪怨」シリーズの伽椰子が夢の対決を果たしているのが本作です。
そして、ホラー映画ファン以外はピンとこないかもしれませんが、監督は、あの「ノロイ」を生み出した白石晃士なんですね。
ということで邦画ホラーを全方面において極めた作品の集大成ということなんです!(力説

今年は、「バットマン vs スーパーマン」があり、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でもキャプテン・アメリカチームとアイアンマンチームの戦いが描かれるなど、再びバーサスものが脚光を浴びている年になっているのではないでしょうか?

企画や設定だけ聞くと、ネタ切れだから戦わせてみるか、的な安易なアイデアと思いがちかもしれませんが、なかなかどうして、面白い作品に仕上がっているケースも多くあります。

バーサスもののさきがけと言えば、2003年の「フレディ vs ジェイソン」でしょうか。
「エルム街の悪夢」シリーズのフレディと「13日の金曜日」シリーズのジェイソンの対決ですが、プロットとしても、フレディの悪夢を恐れて人々が夢を見なくなる→それだと困るのでジェイソンとかいう奴の夢に侵入してひと暴れしてもらおう→ジェイソン、無双しすぎてフレディの獲物がいなくなる→対決!という展開が素晴らしかったですね。
悪夢にうなされるジェイソンを若者たちが「地の利を活かせばなんとかなる!」という発想でクリスタル・レイクに連れて行くくだり、最高です。

そのヒットを受けて翌年に作られたのが、「エイリアン vs プレデター」です。こちらもSF界の2大人気クリーチャーの対決ということで大変盛り上がりました。
こちらも人間がエイリアンとプレデターの戦いに巻き込まれていく、という展開かとおもいきや、実はそれがプレデターにとっての成人の儀式であることが判明し、ついには主人公の女性がプレデターに認められるまでの姿を描くというだいぶあさっての方向に展開しながらも面白いという作品でした。

その後、バーサスものは数々の亜種が作られていきますが、めぼしい作品がなかったのも事実です。
エイリアンだけでも、その後、ニンジャ、エイリアン、アバター、エクソシスト、竜の騎士、モンスター、ジャンゴ、ヴァネッサ・パラディといろいろな対決を見せてくれています(日本ではほとんど未公開ですが)。

そして今年、再びバーサスものが脚光を浴びてはいるのですが、先述のアメコミの2作は残念ながら肩透かしといった色合いが強かった気がします。
もちろん人気のヒーローが活躍するということで楽しめる部分も多かったのですが、一番重要なのは軸となる「戦う意味」についてですね。
特に、「バットマン vs スーパーマン」では、単なる勘違いのレベルでしたからね。
そういった意味合いでも本作には俄然注目したいところです。

でまあ、結論から申しますと、個人的には大満足な出来だったと思っていまして、その魅力をどう伝えたらよいかわからないので、とりあえず例によってネタバレ全開でお送りしたいと思います!(恒例)

ただ、少しでも興味がある方には余計な情報を入れずに見て頂きたいと思いますので、今すぐ回れ右して、鑑賞後に御一読いただければと思います。

ということで、


↓↓↓ネタバレ注意!↓↓↓


冒頭、福祉課の人が、何日も反応がない独居老人宅を訪問します。
真っ暗な部屋でテレビがつけっぱなしだったので、食い入るように画面を見ると、そこに映しだされたのは建物の扉とそこを叩いているかのようなドン、ドンという音。
ふと足元に目をやると、そこには!!!

なんともホラー映画っぽいオープニングでスタートします(注:ホラー映画です)。そしてこの映像は貞子というよりはどちらかと言えばサマラ仕様でしたね(ハリウッド版「THE RING」参照)。サマラ仕様って書くとなんかインドっぽい。

場面は変わって、大学の講義。
目の前で女子学生が爆睡しているのも気にせず、講師は授業をしています。
内容は、都市伝説。
口裂け女、トイレの花子さん、人面犬、呪われた家呪いのビデオテープ・・・って、ついにそこまで肩を並べるぐらいメジャーな存在になったんですねー、貞子も伽椰子も。
この講師、森繁(甲本雅裕)は、その中でも特に貞子の存在に異常なまでの関心を示しており、授業でも詳しく解説してくれます。
「呪いのビデオを見てしまったら、すぐに貞子から電話がかかってくる。そしてその2日後に必ず死んでしまう」と。

・・・

なんか、期間が早まってる!


1週間後だったはずなのに、2日しか猶予がなくなってる!

スピード化社会恐るべし・・・。

森繁は、「もし呪いのビデオを見つけてきてくれたら、高く買うよ。」と言ったり、自分の著書を宣伝したりして、爆笑のうちに講義が終わります。
てか、この講義、担当したい。

講義のあと、有里(山本美月)は夏美(佐津川愛美)に母親の結婚式のビデオをダビングして欲しいと頼まれます。
学食5回分につられた有里は引き受けることにしますが、ビデオを再生する機会がないため、夏美と一緒にリサイクルショップに行きます。
そこで古いビデオデッキを見つけて購入します。
有里の家でダビング作業を始めようとしたところ、デッキの中からラベルが破られた古いビデオテープが出てきます。
不安がる夏美を尻目に「面白そうだから再生してみようよ。」と有里はビデオを再生します。
怖いとは思いつつもつい見てしまう夏美、そして有里は・・・

LINE来てた!

再生中ずっとLINEのやりとりをしていたので、全く映像を見ていなかった!
恐怖に震える夏美に対し、「ん?もう終わっちゃったの?」と無邪気に答える有里。

ここで、この記事の上部のstoryあらすじをもう一度読んで頂きたい。

「有里は呪いのビデオを見てしまった夏美を助けるために・・・」

お前が見せたんかいー!

程なく夏美の携帯電話がなり、キーンと不快な高周波呪いサウンドが流れたので、貞子に呪われたこと確定です!
てか、今回のビデオはちょっと目をそらしてれば大丈夫っていうゆるゆるの判定なんですかね。

だが、思い出して欲しい。
冒頭、森繁先生の授業で、有里は爆睡を決め込んでいたので、呪いのビデオについて何も聞いていなかったのだ!
良い子のみんなは、授業はしっかり聞こうね!

その頃、リサイクルショップでは、バイトの店員が「呪いのビデオ、売れたんですかー?」と言ってきます。
彼女は動作確認のために呪いのビデオを見てしまったようですね。
それでなんか変な無言電話?かかってきて、もし呪いだったら今日がちょうど2日後だから、私、呪いで死んじゃうですよー、アハハ・・・。

からの、飛び降りて死亡!

この短時間で見事にフラグを立ててからの速攻が決まります。
呪い達成までの時間短縮といい、本作は実にスピーディーです。
ほどなくこの事実を知った有里と夏美も、呪いのビデオが本物であることを確信します。

軽はずみな気持ちで夏美を呪わせてしまった有里もさすがに責任を感じたのか、森繁に相談に行くことに。
「確かに本物っぽいけど、もし実在しているなら、今みたいな時代、ネットに上がって広まってるよね~。」と都市伝説っぽさを強調する森繁でしたが、夏美は「だったら先生も見て下さいよー。」とチクリ。

呪いのビデオに興奮を隠せない森繁は、とりあえず見てみることにします。
万が一のことを考えて一人で見ると言い、有里と夏美を部屋の外に出す森繁ですが、「とりあえずこれはダビングさせてもらうよ~♪」とこの楽しみは誰にも渡さない、感が満載です。

ほどなく、

「あああぁぁあぁぁあぁあぁぁあ!」

と、たぶん森繁の悲鳴が聞こえてきます。
「いや、これは叫びじゃない。歓声だ・・・。」
とも一瞬思いましたけど。
その後に着信アリだったことからも呪いのビデオが本物であることを森繁も確信します。

森繁は呪いを解くための方法の説をいくつか考えていて、その1つが「呪いのビデオを広めること」と指摘します。
有里は「じゃあ、夏美は今先生に見せたからこれで大丈夫ですか?」と聞くと、森繁が言ったのは、

「いや、僕は君(有里)からビデオを受け取ったから、彼女(夏美)は逃れられないよ。」

だったら、夏美から受け取ってやれし!

絶望感に打ちひしがれた2人だったが、森繁が対策を考えてくれるとのことに一縷の望みを残し、家に帰ります。

一方、場面は変わって、鈴花(玉城ティナ)は家族とともに新しい家に引っ越してきます。
その家の向かいには、人の住む気配のない朽ちかけた家がありました。
新しい学校の同級生の話では、そこは呪われた家で、中に入ると呪われて死んでしまうのだと。

ある時、その家の前に男の子がいるのを見て心配で声をかけた鈴花でしたが、その子は大丈夫と言っていたので、そのまま家に帰ります。
しかし、その子はいじめられており、この呪われた家の中に入るように脅されていたのでした。
しかもランドセルには石を詰められていたのです(伏線)。

家の中に入った少年は、そこで青白い顔をした俊雄と遭遇します。

俊雄に勇気をもらったのか、それとも操られていたのか、この少年は様子を見に来たいじめっ子に対し、石を投げてきます。

それがクリーンヒット!

怒ったいじめっ子たちはこの少年を追いかけて呪われた家に入ってきます。
ここからは俊雄の独壇場です。
神出鬼没で気配を感じさせずにいじめっ子を一人、また一人と亡き者にしていきます。
ジェイソン・ボーンも真っ青です。

いじめっ子のボスが押し入れに隠れる少年を見つけたと思ったその瞬間、少年が再び投石!

クリーンヒット!

よろめいているところに俊雄が現れ、とどめをさします。

ナイスコンビネーション!

と思っていたら、押入の奥から伽椰子が現れて、いじめられていた少年も黄泉の国へと連れ去られてしまいます。
ナイスコンビネーションはこっちだったか・・・。

このシーン、陰湿ないじめだし描いている内容はシリアスなはずなんですが、石がわりとガチなサイズでしかもいじめられっ子がコントロール抜群すぎるわ、俊雄も機敏だわで、展開の無駄の無さもあいまって、どういうわけか笑えるシーンに仕上がっているんですよねー。

腹痛ぇ・・・。

しかし、この映画の瞬間最大風速は、この後にやってくるのでした。
覚悟はいいですか!?

そして、本当に、少しでもこの映画を見たいという気持ちがあるのなら、まだ遅くはないので、ここから先は映画を見てから読んでいただきたい!



夏美と有里は、森繁のつてで凄腕の霊媒師・法柳の元でお祓いをしてもらうことになります。

夏美は白装束に着替えていますが、森繁は普段着のまま。
法柳は、「森繁、お前もビデオを見たんじゃないのか?」と問いかけたのに対し、

森繁「いや、僕はいいです。( ー`дー´)キリッ」

サイコか!
まあ、タイムラグがあるので1日猶予はあるわけですが、これむしろ、お祓いしてもらっちゃったら貞子に会えないかも(´・ω・`) ってことですよね?
サイコか!


かくして法柳は貞子の呪いの霊媒を開始します。

夏美は両脇を法柳のシュールな助手2人に支えられた状態で、法柳の前に鎮座しています。

法柳、「この娘の中にいる邪悪なもの、出てこーい!」と言いながら、大量の御神水を飲ませる!

思わずむせる夏美に対し、法柳、ビンタ!

それを見ていた有里がその荒っぽさに「ちょっと!」と止めに入ろうとしたら、有里にもすかさずビンタ!

なおも夏美に御神水をぶちまける法柳!

隣りにいるシュールな助手たちももはやビショビショ!

すると夏美は何かに取り憑かれたように動き出す!

法柳がただならぬ力に脅威を感じていると、シュールな助手、静かにもう一人の助手背後に回ると、そのまま首の骨を折る!

さらには自分の首の骨も折る!

法柳「これはもはやわたしの手には負えない。(こんなこともあろうかと)経蔵を呼んでおいた!もうすぐ到着するはずだから、神棚の下のお金でなんとかしてもらえ!」
と言い残すやいなや、貞子に憑依されます。

森繁「え?(それだけ?)貞子は?貞子に会わせろー!!!」

法柳、森繁に頭突き。すると森繁の頭がでっかくなっちゃった!(死亡)

いや、このシーンは間違いない、映画史に残る!(断言)
ホラー映画なので怖さを楽しみに来ていた他のお客さんには申し訳ないと思ったんですが、声を上げて爆笑しましたよ。

正気を取り戻した夏美は凄腕の霊媒師でも太刀打ちできなかったことを悟り、有里を責め立てます。
それに対し有里は、夏美からビデオを受け取り、自分でも見ることにします。
ここで観客もようやくビデオを全編見れるのですが・・・

井戸はぁあ!!!

もうこれ完全にサマラやんけ。
海賊版やんけ。
と打ちひしがれてしまったのも事実です。

こうして諸悪の根g・・・じゃなかった有里も貞子の呪いにかかってしまうのです。貞子からの着信の直後、何者かがやってきます。

それが最強の霊媒師、経蔵(安藤政信)とその助手にして盲目少女の珠緒(菊地麻衣)でした。
颯爽と除霊して見せて「これは期待!」と思いきや、夏美のために自分もビデオを見た有里には「無駄なことしやがって」と一蹴、助手の珠緒も死んでいる霊媒師とその助手、森繁を見て、「この人、スゴイ無駄死だね」と言ってのける始末。

この発言に有里は真面目に怒るのですが、かつて「ミズチ -水霊-」では、井川遥が自分を救おうとした結果命を落とした元夫に対して、ナレーションで、「犬死でした」と言い放つのに比べたらどうってことないぞ!

金をせしめた上に、「誰がお前のために除霊するかよ」と言いたい放題ですが、「フッ、冗談だよ。」とすぐに言ってくれるので、なんだただのツンデレかと。

経蔵たちが貞子の呪いを解くための下準備にとりかかっている間、有里と夏美は一歩も外を出るな、と言われてしまいます。
有里、「じゃあ、代わりにお願い。」と、夏美の親の結婚式ビデオのダビングを経蔵に頼みます。そんなのも頼めるのかよ。

経蔵「チッ、仕方ねーな。」

引き受けるのかよ!

経蔵と珠緒は、伽椰子の家のドアを開け、念を込めた石を投げて俊雄をいじめるなどして、ロケーションのチェックを行います。
そして伽椰子の家の裏庭に行くと、そこにはなんと!

井戸が!

その頃、鈴花は、そもそも霊力が強いのか、一歩も入っていないのに気が付くと伽椰子の家の幻を見たり、クラスメイトにやってもらったタロットで最悪のカードをコンボしたりしています。

有里と夏美は2人で結婚式ビデオを見ます(無事にダビングしてくれた模様)。夏美はできちゃった婚で生まれてきて結婚式の時は(生まれていなかったので)すごく可愛がってもらった、と今さらどうでも良いことを言います。
有里も「夏美は今もカワイイよ。」と今さらどうでも良いことを言います。

有里がシャワーを浴びていると、手に大量の髪の毛が絡まっていました。

そして、脱衣場には貞子らしき人影が!→夏美でした。

もうすぐ2日の期限が来てしまう夏美は、自暴自棄になっており、なんと!森繁がダビングした呪いのビデオDVD版の動画をネットにアップしていたのでした!
アナログな作業はできなくてもデジタルなことはできるのか!
現代っ子め!

この動画の拡散後どうなったのかは本作では一切描かれていませんが、気になる方は、「貞子3D」でも見ればいいと思うよ!

さらには夏美は貞子に呪い殺されるぐらいならば、と、有里の部屋で自殺を試みます。
その瞬間!

貞子が前倒しでやってくる!

で結局呪い殺されてしまいます。

その直後、手はずを整えた経蔵と珠緒が戻ってきます。
経蔵の作戦では、

1.有里が貞子に呪われた状態で、伽椰子の家にいく。
2.伽椰子の家に入ると伽椰子の呪いがかかる。
3.それにより貞子と伽椰子の呪いがWブッキングになるので、空中元彌チョップで解決。

ということだそうで。

半信半疑ながらも他に頼るものがない有里は経蔵についていきます。

一方その頃、鈴花は並々ならぬ気配を感じて窓の外を見ると、伽椰子の家に、あのいじめられていた少年がいることに気がつきます。
彼ら(いじめられっ子といじめっ子)は鈴花が目撃した日以降行方不明になっていたのですが、そのことに責任を感じていた鈴花は意を決して、伽椰子の家に潜入します。

そこであの少年を見つけたと思ったら!

俊雄でしたー!

阿鼻叫喚の中、鈴花を助けに鈴花の両親も伽椰子の家にやってきます。
子どもには子どもを、大人には大人を!

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

ここにきて伽椰子がやってきて、お父さんの首を引っ張ったり、お母さんの足を引っ張ったりしてきます。
ついには鈴花も・・・という時に、お母さん、身を挺して鈴花を守ります。
そしてそこにかけつけた経蔵たちに鈴花はなんとか救われます。
お母さんは伽椰子によってそのまま2階にご案内されます。

鈴花が気が付くと、鈴花の家に連れてこられていました。
動揺する鈴花に、有里は、

「わたしも別の呪いにかけられてるの。」

と何の慰めにもならない自己紹介をして、勝手にお茶を入れてくれます。

こうして2人が呪われてしまったので、作戦変更で、以下のようになります。

1.有里が貞子に呪われた状態で、伽椰子の家にいく。
2.伽椰子の家に入ると伽椰子の呪いがかかる。
3.鈴花は伽椰子の家で呪いのビデオを見る。(←NEW)
4.それにより2人それぞれに貞子と伽椰子の呪いがWブッキングになるので、ぶつかりあって全て消滅する!

果たしてこの作戦はうまくいくのか?

それは、ぜひ劇場でお確かめを!


ということで、盛大にネタバレしつつ書いていきましたが、本作の原点にもなっている初代の「リング」と「呪怨」は、呪いを解くには、助かるには、というスタンスが明確に打ち出されていて、それがミステリー的な要素を高めているのも魅力だと思うんですよね。

それがその後のシリーズにともないどんどん消えていき、ネタに走りだしてしまった感が否めないのは残念でもあり、いやこれはこれで面白いという気持ちもあり、複雑なアンビバレント状態です。

本作も、事前の告知や貞子、伽椰子、俊雄のメディア露出が派手すぎて、きな臭い予感はしていたのですが、映画自体はよくできている印象でした。
正直、自分はホラー映画見すぎて怖い、怖くないの判断できなくなっているのですが、普通に怖がっている人も、いるにはいましたよ。
なので、オーソドックスな楽しみ方も、きっとできるはずです。

だいぶ暑くなってきた今時分ですが、せめてもの納涼感を求める方は、ぜひ劇場でご鑑賞下さい!

「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」から考えるしくじり効果



「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」では、いつきのあまりにも非の打ち所がないパーフェクトヒューマンぶりに、観ている女性はもちろん男性すらもファンファンウィーヒッタステーッステー状態になっていたことでしょう。

ただ、その一方で、自分との歴然とした差を感じてしまった人もいるのではないでしょうか。
イケメンで、家柄もよく、優しく、料理好きで・・・この部分は本作のレビュー記事を読んでいただければ、その偉業がわかります。
カップルで観に行ってしまった人は、彼女が自分よりもスクリーンの中にいる男性に魅入られるのも仕方がないというものです。
(カップルはこの映画、ドンドン見に行けばいいと思うよ!)

さて、ここで理想の相手とはどんな人であるべきでしょう?
上記のように、イケメンが良い、優しい人が良い、金持ちが良い・・・理想を上げればきりがないという人もいるかもしれません。

Aronson, Willerman & Floyd(1966)では、実験参加者に2種類のテープを聞かせました。そのテープでは、ある人物に常識クイズに回答してもらった後、自分の履歴を語ってもらっているという内容で、どちらのテープでも、クイズの成績は極めて良く、その後に語られる履歴も優秀で輝かしいものでした。唯一違っていたのは、最後の方で、一方のテープでは、コーヒーをこぼして新品のスーツを台無しにしてしまうという様子があった点で、これはもう一方のテープにはありませんでした。

テープを聞いた後に、そのテープで語っていた人物の印象評価をしたところ、コーヒーをこぼすという失敗をした人物の方が、より好感を持たれるという結果になりました。つまり、完璧すぎる人間よりも、ちょっとした失敗をする方が、より人間味があって魅力的であると評価されるということです。
このように、ちょっとした失敗やドジをすることによって同情心や人間らしさを感じることによって、完璧すぎるよりも評価が高まることは、しくじり効果と呼ばれています。

これで、自分が完璧じゃなくても一安心といったところでしょうか?
あ、でも岩ちゃんがちょっとドジっ子なところ見せたら、全くかなわn・・・

なんだ、失敗しても大丈夫なのか!と思いたいところですが、Aronsonらの追加実験で、先ほどと同様の状況で、今度はテープの人のステータスが、クイズの正解率も履歴も平凡だった場合にどのような評価になるかを比較しています。その結果は、先ほどとは逆になり、コーヒーをこぼした方はさらに印象が悪くなってしまいました。つまり完璧な人がちょっとしたミスをすることは好感度アップにつながりますが、普通の人がやると、単なる失敗とみなされるわけですね。Oh...

ワイズマン(2012)はAronsonらの実験をショッピングセンターを舞台に行っています。彼の実験では、サラとエマという2人の女性に新型ミキサーを使ったフルーツドリンクの作り方を初回するというデモを行ってもらいました。サラは完璧にミキサーを使いこなしてフルーツドリンクを完成させるのに対し、エマは最後にミキサーのフタを十分に閉めず、ジューサーの中身を頭からかぶってしまいます。
この2人のデモを見た後の印象評価では、サラのデモには説得力があったという評価でしたが、失敗をしたエマのほうが好感が持たれたという結果でした。先のAronsonらの実験結果を追従する形となっていました。

Chu, Hardaker & Lycett(2007)では、女性の実験参加者に60名分の男性の写真と履歴を見せて、好感度と結婚したいと思うかを評価してもらいました。その結果、見た目がハンサムな人、所得が高いと思われる職種の人の好感度は高くなっていましたが、結婚したいと思うかの評価においては、ハンサムで高収入と思われる人の評価は低くなっていました。
これは、その手のタイプの男性が多くの女性にモテて、浮気の可能性も高まるとの解釈だそうです。ここでも完璧すぎることへの敬遠は起こっているようですね。

これで多少の欠点があっても気にせずにいられますね!

にも関わらずモテない人は、この考えを逆手に取ってしまえばいいのです。
そうか、自分は完璧すぎるからモテないのだと!

ハハッ・・・(おや目から水が)

[引用]
Aronson, E., Willerman, B., & Floyd, J.(1966). The effect of pratfall on increasing interpersonal attractiveness. Psychonomic Sceience, 4, 227-8.

Chu, S., Hardaker, R., & Lycett, J. E.(2007). Too good to be "true"? The handicap of high socio-economic status in attractive males. Personality and Individual Differences, 42, 1291-1300.

リチャード・ワイズマン(2012). その科学が成功を決める. 文藝春秋.
プロフィール

すぷーとにく0107

Author:すぷーとにく0107
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中の人は、北海道は札幌市在住です。
映画館で年間200本は映画を観ます。
当ブログでは、映画のレビューをしつつ、勉強している心理学ネタでも書いていけたらいいなと思っています。

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