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「手紙は憶えている」から考える認知症患者の記憶



「手紙は憶えている」では主人公が認知症のため記憶が曖昧であるということで生じる様々なトラブルを巧みに取り入れたサスペンスとなっています。

日本でも特に高齢化社会にシフトしつつある中、自分の親戚や知人が認知症だと言う人も少なくはないのではないでしょうか?
そこで今回は認知症の実際について、映画のエピソードを交えつつ紹介していこうと思います。

認知症とは?

様々な原因で脳細胞の働きが悪くなったり活動しなくなったりすることで生じる脳機能障害の全般のことを言います。最も多いのがアルツハイマー型認知症で、これは脳が萎縮してしまうことで圧迫された脳の部位の活動が影響を受けるというものです。
かつて日本では痴呆症と呼ばれていましたが、2004年より認知症という呼称で統一されています(「痴呆」に替わる用語に関する検討会, 2004)。
認知症=記憶がなくなる、と思われがちですが、もう少し広義のもので症状も人により様々だということですね。

認知症の症状

多くの認知症と診断された患者に共通しているのが上記のイメージのような記憶障害です。記憶は、その保持時間によって短期記憶長期記憶に分けられるのですが、短期記憶の方がより影響を受けやすいということが知られています。
ちょっと前に聞いたことをすぐに忘れてしまうといった傾向が見られやすくなります。
短期記憶に影響が大きく見られる理由の1つとして、新しい情報を記銘することが難しいとも言われています。これは認知症ではなくとも中年期、老年期と加齢してくることで一般的に見られる傾向で、新しい情報を書き込みづらい上に、思い出すのも難しいのが認知症の症状と言えます。

「手紙は憶えている」では、序盤でセヴがあるものを購入しますが、その使い方をしきりに「紙に書いて欲しい」と言っているのにはこういった理由があるわけですね。

長期記憶は、その内容によってさらに宣言的記憶手続き的記憶に分類されます。宣言的記憶には、意味記憶エピソード記憶の2種類があり、意味記憶は「太陽は東から昇る。」とか「リンゴは赤い。」といった事実に基づく記憶のことで、エピソード記憶は、「子供の頃家族と旅行にいった。」とか「昨日の夜お寿司を食べた。」といった自分に関する出来事についての記憶になります。
認知症の症状としては、エピソード記憶でも特に最近のものは忘れやすい一方で昔の記憶は正確に覚えていたりもします。

「手紙は憶えている」でも、最愛の妻が亡くなったことは忘れてしまいがちですが、クリスタル・ナハトのエピソードを詳しく話していたりと昔のことは鮮明に覚えていたのかもしれませんね。

一方で、手続き的記憶は、たとえ認知症になったとしてもしっかりと保持されている場合が多いです。

「手紙は憶えている」では、セヴがピアノを弾くシーンがありますが、これは手続き的記憶に含まれますので、覚えていたとしても不思議はないのです。

認知症はさらに症状が重くなると、自分のいる場所や、今の日時、家族や友人など特定の人物がわからなくなると言った見当識障害が見られるようになります。
セヴはあまりそういった傾向は見られなかったので比較的軽度なレベルなのかもしれませんね。

さらに重度になると、幻覚や妄想、徘徊などの行動、抑うつや不安といった状態になることも知られています。
マックスがセヴに手紙を託したのも、もしこれより遅ければセヴは使命を全うできないと考えたからなのかもしれません。

最後に、最近のエピソード記憶が保持されにくい、ということに一石を投じた研究を紹介します。
Kazui, et. al.(2000)では、認知症の患者に、ある母親が自分の息子を連れて父親の職場を訪ねるという場面を写真とともにストーリーとして説明し、その途中で、「防災訓練をしているシーンを見かける」という感情喚起低条件と、「息子が事故にあい医者が懸命に救おうとしている」という感情喚起高条件で、どちらのエピソードが記憶に残るかを調査しました。
その結果、感情喚起高条件においては、健常者と比較してもあまり劣らない結果となりました。つまり印象が強かったり衝撃が大きかったりする出来事については、たとえ認知症であっても情報を記銘したり、思い出したりすることが可能だということなのです。

記憶を失いつつあるゼヴに最後に残っていた心象風景はいったいなんだったのでしょうか?
願わくば、幸せな思いでがあらんことを!

[引用]
「痴呆」に替わる用語に関する検討会(2004). 「痴呆」に替わる用語に関する検討会報告書.

H., Kazui et al(2000). Impact of emotion on memory Controlled study of the influence of emotionally charged material on declarative memory in Alzheimer's disease, British Journal of Psychiatry, 177, 343-347.
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Author:すぷーとにく0107
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映画館で年間200本は映画を観ます。
当ブログでは、映画のレビューをしつつ、勉強している心理学ネタでも書いていけたらいいなと思っています。

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