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「虐殺器官」感想。


(公式HPより引用)

[story]
9.11以降、アメリカを始めとする先進諸国は自由と引き換えに徹底した管理システムを導入した一方で、発展途上国では日々紛争が繰り返されていた。クラヴィス・シェパード大尉(中村悠一)は、感情調整や痛覚マスキングといった医療措置を施し紛争の首謀者暗殺をミッションとするチームに属していた。そんな中、アメリカの言語学者ジョン・ポール(櫻井孝宏)という男が紛争の火種をバラ撒いているとの情報があり、クラヴィスは、ジョンが接触したとされる女性ルツィア(小林沙苗)からジョンの行方を探ろうとするが・・・。

34歳の若さで夭逝したSF作家・伊藤計劃の同名小説のアニメ映画化。
Project Itohの完結編は満を持して彼のデビュー作にして最高傑作とも言われる本作になりました。

この原作はすでに読んでいたのですが、当時の衝撃はいまだに覚えています。日本でここまで本格的なSF小説を目の当たりにしたというのもそうなんですが、物語の端々に出てくる会話のやり取りから、伊藤計劃の知識や博覧強記ぶりがうかがい知れます。
さて、その映画版ははたして!

映画版ではその膨大な情報量を処理しつつ当然のことながらストーリーを展開していく必要があるわけで、自分が原作を読んだときに会話のやり取りにでてきた多岐にわたる分野のエピソードはだいぶスリムアップされている印象でした。
まあ2時間程度にまとめるということを考えるとストーリーの本筋に直接的に関係しないエピソードが省略されてしまうのは仕方ないですね。ケヴィン・ベーコン・ゲームの話とか面白いんだけどね・・・。

ストーリーは特殊部隊のクラヴィス・シェパード大尉が、世界各地の紛争の引き金となっている人物ジョン・ポールを追う、というのが基本展開となっていますが、その背景として先進国と発展途上国の違いが対照的に描かれています。

アメリカを始めとする先進諸国は、911のテロ以降、人々のあらゆる行動を政府の監視下に置くという徹底した管理システムを構築し、出入国どころか日用品の購入でさえも本人認証をするという徹底ぶりです。いわば自由を捨てて安全を取るという政策ですね。
これにより確かにテロによる脅威は減ったのかもしれませんが、息の詰まるような感じがしないでもありませんね。

クラヴィスがジョン・ポールと接点のある女性ルティアに接近するべくプラハに行ったとき、彼女の誘いで行くバーでは現金でお酒を購入できるということにすら驚いていることからもうかがえます。

自由と引き換えに安全を手に入れたはずのアメリカがなぜ世界の紛争に対して軍を派兵しているのか、なぜ執拗にジョン・ポールを追うのか。
その1つの答えがタイトルにもなっている虐殺器官です。
言語学者であるジョン・ポールがその研究の過程で虐殺器官の正体に気がついてしまったのです。そしてそれを利用することで紛争や虐殺を引き起こすことが容易であると。

虐殺器官の正体はぜひ映画もしくは原作を見て知ってほしいところですが、人間の本能的な部分に関わるものであるという点では、感情統制や痛覚マスキングというテクノロジーによって極めて合理的にあるいは無感情的に行動できるようになったクラヴィスたちとは実に対照的であるとも言えます。

原作が2007年の発表で、Project Itohとして映画化が決定されるも制作会社の倒産もあり、結果として10年ごとなる2017年の公開となりましたが、この間にアメリカではトランプ政権が誕生し、テロを始めとする国際的な脅威への徹底抗戦の姿勢が打ち出され、さらにはオバマ政権下でも明らかになった国民の監視システムの存在など、まるでこういう状況を予見していたかのような設定にはただただ驚かされます。

本作を見て改めて思い起こされたのが、かつてドキュメンタリー「シチズンフォー スノーデンの暴露 」で取り上げられ、日本で今年公開となった「スノーデン」でも描かれていたエドワード・スノーデンです。
彼は過度の管理システムに疑問を抱き、亡命して告発者となる道を選びましたが、システムを悪用すればジョン・ポールのような存在になりえたのかもしれません。

原作と比べるとラストの展開が異なっており、また省かれたエピソードも多いため、映画の方が解釈の可能性がやや大きくなっているのですが、映画を見た上でいろいろと思案したり議論したりした上で、原作の方を読んでみることをぜひオススメします。
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すぷーとにく0107

Author:すぷーとにく0107
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中の人は、北海道は札幌市在住です。
映画館で年間200本は映画を観ます。
当ブログでは、映画のレビューをしつつ、勉強している心理学ネタでも書いていけたらいいなと思っています。

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