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「のぞきめ」から考えるスポットライト効果、透明性の錯覚、観察者バイアス



「のぞきめ」のキーワードとして、「誰かから見られている」意識、が根底にあります。
映画自体はあれでしたが、この、誰かから見られているかもしれない、という間隔は誰しもが一度は抱いたことがあるのではないでしょうか?

この感覚を逆手に取って利用しているのが、東京都内を中心に各所に貼られている犯罪抑止ステッカーです。
犯罪行為のように後ろめたい行動をしている時に、こうした目のステッカーが貼られていると、普段よりも、より「誰かに見られいてる」感が高まり、結果として犯罪の抑止につながるというわけです。
実際の効果の程はわかりませんが、他人の目を気にするという心理をうまく利用したものだと思います。

ところで、実際には人はどれぐらい周りの人から見られているものなのでしょうか?
これを調べるために行われた面白い実験があります。

Gilovich, Savitsky, & Medvec(2000)は、実験参加者に、実験のためにあるTシャツを着るようにお願いします。このTシャツは、バリー・マニロウという往年の歌手の顔がプリントされたもの、要するに、超ダサいTシャツを着せられるというものでした。
しぶしぶTシャツを着用して、同じく実験を受ける他の人たち60人ほどと一緒に教室に入るのですが、なんと!他の人は普通の格好で、自分だけがものすごいダサいTシャツを着ているという状況になります。

この不運にもTシャツを着せられてしまった実験参加者は、早く実験が終わってくれないか気が気でなくなります。
周りの人がこちらを見るたびに自分のダサいTシャツを笑われているのではないかと気になります。

しばらくして実験者がやってきて、手違いで今日は実験ができなくなりましたと、お詫びの言葉とともに解散が言い渡されます。
しかし、実はここからがこの実験のメインでした。

まず、このTシャツ着せられた実験参加者に、自分がこのダサいTシャツを着ていることを周りの人はどれぐらい気づいたかを予想させます。
すると、およそ50%ぐらい、教室にいた半分ぐらいの人が気がついていた(そしておそらく笑っていた)と回答します。
次に、このダサいTシャツを着た人と同じ教室で実験開始を待っていた他の人たち(観察者)に、ダサいTシャツを着た人に気がついたかどうかを質問しました。すると、気がついたのは、全体の23%、約2割程度の人しか気づかなかったという結果になりました。

つまり、自分が思っているほど、他の人には見られていないということになります。たとえ着ている服がダサくとも、ミートソースのシミを白い服に付けてしまったとしても、寝癖が治らなかったとしても、過度に気にする必要はないということになります。
このように、実際よりも過剰に誰かに見られていると感じる意識のことを、スポットライト効果と呼んでいます。

この誰かに見られているという意識は、外面的なことだけではなく内面的なことにも言えます。
Gilovich, Savitsky, & Medvec(1998)では、実験参加者に、周りの人にある「嘘」をつくように言われます。
その後で、周囲の人に自分のついた嘘がどれぐらい見透かされているか、周りにバレているかを予測させます。
そうすると、やはり先の実験のように、嘘がより多くの人にバレていると過大に見積もる傾向が見られました。
この結果は、嘘をつく場合だけでなく、自分の感情や気持ちを表出しないようにする場面でも同様のものとなりました。
これは、透明性の錯覚と呼ばれ、外面だけでなく内面的なことにおいても、自分の考えや気持ちは過剰に周りにバレていると認識してしまいます。

結局のところ、外面的にしろ内面的にしろ、自分が思っているほど、誰かに見られているわけではありませんよ、というのが事実です。
そうは言ってもやはり気になる!
そんな人には、いくら先述したスポットライト効果や透明性の錯覚の話をしたところでキリがありません。
それならば、むしろ「見られている」という意識を逆手に取ってしまいましょう。

Mayo(1933)は、第二次産業革命以降、生産性のみを重視する科学的管理法に対して、労働者の不満が増大していることを背景に、労働環境についての大規模な実験を行いました。その工場の名前を取って、ホーソン実験などと呼ばれています。
この実験の一環で、休憩の時間、給与体系、休憩時の食事など、様々な条件を変更することで、労働意欲と生産性にどのような影響があるかを調べる、リレー(継電器)組立実験が行われました。

この実験で結果的に労働意欲、生産性とも非常に高い結果が得られたのですが、先ほどのどの条件によって結果が向上したのかが判明しませんでした。
その原因として考えられたのが、実験の環境でした。
この実験は会社をあげての大規模実験だったため、実験者であるMayoはもちろん、他の会社の重役たちも実験状況を把握できるように、ガラス張りの作業室で作業を行っていました。
仕事中(つまりは実験中)は常に誰かの目にさらされており、中には会社の重役も含まれていたため、実験参加者は作業をサボることができないばかりか、重役の前で一生懸命働いていることを見せようとアピールしてしまったため、実際よりも労働意欲や生産性が高まってしまいました。
これは観察者バイアスと呼ばれ、見られている意識があるからこそ通常よりも頑張ってしまった結果と言えます。

前回の話題にあった公的自己意識と同様、神経質なまでに他人に見られているという意識はストレスになってしまうかもしれませんが、適度に誰かの目にとまるかもしれない、と意識しておくことで、身だしなみには気をつけようとか、服装や化粧をしっかりしようとか、あるいは日常的な振る舞いや行いを気をつけようという形に結びつけることができます。
ぜひとも、誰かに見られているという意識は有効に働かせていきたいですね。

[引用]
Gilovich, T. Savitsky, K. & Medvec, V. H.(1998). The illusion of transparency: Biased assessments of others' ability to read our emotional states. Journal of Personality and Social Psychology, 75(2), 332-346.

Gilovich, T. Savitsky, K. & Medvec, V. H.(2000). The Spotlight Effect in Social Judgment: An Egocentric Bias in estimates of the Salience of One's Own Actions and Appearance. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 211-222.

Mayo, G. E.(1933). The Human Problems of an Industrial Civilization , Routledge & Kegan Paul , Macmillan.
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Author:すぷーとにく0107
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当ブログでは、映画のレビューをしつつ、勉強している心理学ネタでも書いていけたらいいなと思っています。

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