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「ハドソン川の奇跡」から考えるエキスパートの意思決定



「ハドソン川の奇跡」では、ベテラン機長のサリーがエンジン停止というトラブルにおいても冷静に対処し、ハドソン川への不時着を試み、それに成功したことで、犠牲者ゼロを成し遂げたということで、後に、"ハドソン川の奇跡"と称されるようになりました。

しかし、当のサリー機長は、この出来事を、「奇跡」と呼ばれるのには違和感があったようです。それは、感想の方にも書いたように、自分としてはプロフェッショナルとして取るべき選択、しかるべき行動を取ったに過ぎないのだということなのでしょう。

それでは、このサリー機長のようなエキスパートと、私たちのような一般の人とでは、意思決定はどのように異なっているのでしょうか?

クライン(1998)では、消防隊長がいかにして緊急事態における対処をしているのかを調査しました。
その結果、多くの場合、消防隊長は1つの案のみを頭に思い浮かべ、それが実行可能か、実行に移したらどうなるかをシミュレーションし、問題なければそのまま実行し、小さな問題であればそれを修正し、それで不十分だった時に別のアイデアを考えるという意思決定をしていることが示されました。

一般的な意思決定の場面では、たいてい少なくとも2つの選択肢を考えてどちらが良いか比較検討をするとことで良いものを選択するのですが、エキスパートはそのようにはしていないということです。

もちろん1つ目のアイデアを思いつくのには、これまでの実体験や訓練などを通じて蓄積した豊富な知識や行動パターンが必要とされるので、これがまさにエキスパートたらしめる要因とも考えられます。

「ハドソン川の奇跡」でも、サリー機長は、管制の近隣の空港へ引き返して着陸を試みるという提案を一度も受け入れず、エンジン回復のための対処をいくつか試みた程度で、あとはハドソン川への不時着を決定していましたね。

このようなエキスパートの意思決定を参考にして私たち一般の人でもより良い決定をしようという意図で意思決定モデルを構築しようという考え方は、Naturalistic Decision Making(以下、NDM)と呼ばれています(Zsambok & Klein)。これ日本語訳が当てられているのを見たことがない(直訳すると自然主義的意思決定、とかになるのかもしれません)のですが、エキスパートの決定は迅速かつ的確なものであることが多いので、それをありのままに観察し取り入れようという意味を表しているようですね。

このNDMでは、状況診断と行為選択が一連の流れとして示されているのが特徴で、状況判断が的確だからこそ、その後の決定もスムーズに行うことができるというのが特徴です。

そして、クライン(1998)は、エキスパートの意思決定を、認知主導的意思決定と名付け、これがチェスの名人といった他分野のエキスパートにも当てはまるということを主張しています。

認知主導的意思決定によれば、エキスパートは一般の人と比較して、より早く最適な選択肢を思いつくだけでなく、その選択肢が最適だと確信した時点で行動に移せるので、他の選択肢との比較や吟味をする時間もかからないため、極めて短い時間で意思決定が可能になっています。
「ハドソン川の奇跡」でサリー機長が208秒という短い時間でもすべての乗客の命を救うことができたのは、まさにこの敏速性があったからです。これがはたから見れば一瞬で意思決定をしたかのように感じられるため、直感的な意思決定とも言われています。

ただこのエキスパートの直感はいつも正しいのか?という疑問も生じてきます。多くのエキスパートの意思決定の場合、その根拠がうまく説明できないことが多いため、本作の事故調査委員会のように追及されてしまうことにもつながりますし、もちろん、常に正しいという保証がないのも事実です。

この点については、また別の機会で。

[引用]
ゲーリー・クライン(1998).  決断の法則―人はどのようにして意思決定するのか?(佐藤洋一訳)  トッパン.

Zsambok, C.E. & Klein, C. (1996). Naturalistic Decision Making, Chapter 1 Naturalistic Decision Making, Lawrence Erlbaum Associate, Inc.
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当ブログでは、映画のレビューをしつつ、勉強している心理学ネタでも書いていけたらいいなと思っています。

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