「人生フルーツ」から考える高齢者のQOL



「人生フルーツ」では建築家の修一さんとその妻の英子さんの姿を追ったドキュメンタリーでしたが、本作を通して伝わってくるのはお二人の人柄と仲睦まじい姿でした。

とりわけ日本では超高齢化社会と言われるほどの高齢者の割合が高くなってきているにも関わらず、その全ての人が幸せな人生を送っていたかというと、独居老人や孤独死、老年性うつといった問題もあり、必ずしもそうとは言えないのが現状です。

ひとりひとりの人の人生の内容や質、人間らしく文化的で社会的な生活が送れているかどうかをしめす指標は、クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life, QOL)と言います。

小谷(2013)では、全国の男女800人に対して、自分の置かれている状況と幸福度についての関連を調査したところ、近所の人との交流がある人ほど幸福度が高いこと、また住んでいる地域に愛着があるほど、幸福度が高いことが示されました。

津端夫妻は、住宅地の拡張によって削られてしまった山に植樹をしたり、自然との共生をテーマに地域との交流も盛んでした。
また修一さんは建築を通して、英子さんはその生き方を通して多くの人と関わってきていました。
そして何より2人がお互いを思う気持ちが何より幸福感につながっているのかもしれませんね。

90歳になっても自分の妻のことを、最高のガールフレンドと呼べるのはまさに最高のQOLと言えるのではないでしょうか?

[引用]
小谷みどり(2013). 人づきあいと幸福度との関係. LifeDesign Report, Winter 2013.1, 16-23.

「人生フルーツ」感想。


(公式HPより引用)

自らが手掛けたニュータウンの一角の平屋に住む90歳の建築家・津端修一さんと、その妻で庭で多くの野菜と果実を育て編み物や機織りまでこなす英子さんの姿を捉えたドキュメンタリー。

「死刑弁護人」「ヤクザと憲法」などの東海テレビ製作ドキュメンタリーの劇場版第10弾。

自分はあいにく上記の作品は見ていないのですが、東海テレビ製作のドキュメンタリーが非常に良質なものが多いということは聞いていて、しかも本作は札幌ではシアターキノというミニシアター系映画館で上映されているのですが、当初の予定よりも遥かにロングランとなっています。

カメラがとらえるのは、すでに現役を退いた建築家の津端修一さんとその妻・英子さん。
彼らは愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一角に、自ら建てた平屋の丸太小屋に住んでいます。
庭には英子さんが育てた野菜や果実がたくさん実っており、それぞれに小さな立て札でメッセージも書かれています。
修一さんも時には一緒に庭いじりを手伝いながら、英子さんが育てた野菜や果物を中心にしたご飯を食べて暮らす日々。
スローライフの理想型といった形がそこにはあります。

彼らの現在の生活と並行して、若かりし日々のエピソードが描かれます。
時は第二次大戦中、修一さんは海軍技術仕官として厚木飛行場で、戦闘機の製造やその工法を少年工兵たちに教える仕事に従事していました。
戦後は東京大学工学部の建築学科に入学し、卒業後は日本住宅公団で、現在の住まいにある高蔵寺ニュータウンをはじめ、多くの団地などを手がけていることが紹介されていきます。


修一さんの仕事への思いとジレンマ

修一さんはニュータウンの計画の際に、最初に重視していたのが雑木林をふんだんに残すことでした。
それは自然と人間との共生を考えたからだったのですが、時代は高度経済成長期で、人口も増加の一途をたどる時代において、兎にも角にも質より量を求められたのでしょう。完成したニュータウンは無機質な立体が並ぶ大規模空間となってしまいました。

修一さんがニュータウンの一角に住み、自宅周辺に雑木林を残しているのは今もニュータウンに住む人たちの少しでも憩いになれば、という思いがあるのかもしれませんね。

途中、修一さんは英子さんとともに台湾に招待されます。
そこでは、戦時中に日本に連れてこられた台湾の少年工兵たちが今は台湾に帰って、そこで修一さんのように建築家になって、地元の人々が住むマンションを造っていたのでした。
そこには戦争で無理やり連れて行かれたことへの遺憾の念があるわけでもなく、技術を教えてくれたことへの感謝がいっぱいでした。

この修一さんの思いは最後に見事に結実しています。
佐賀県伊万里市に完成した医療施設「街のサナーレ・メンタルヘルス・ソリューションセンター」は、心に病を持っている人と健常者がともに働くことのできる施設で、その理念に感動した修一さんが無償で設計の草案を作成していたのです。
そこでは、訪問看護やカウンセリングのための医療施設だけでなく、広大なエリアの菜園があり、そこで育った野菜や果実を利用したカフェも併設されていました。
そこは人々の共生、さらには人間と自然の共生を目指した空間があり、まさに修一さんの理想とする建築が実現されていました。


未来に残すということ、人生フルーツ

医療施設「街のサナーレ・メンタルヘルス・ソリューションセンター」は修一さんの理想でもある自然との共生として、多くの雑木林が自然な状態のままで残っています。このセンターは2017年にオープンしたばかりですが、10年、20年と時を経ていくのにつれて、自然も人も変化していくことでしょう。この"変化"を意識した建築というのは、イサム・ノグチや安田侃も言っていることで、建築が完成したその1点だけではなく未来をも見据えたものであることに他なりません。

そして英子さんもまた自分たちの暮らし方や住んでいる家や周りの自然、これらをどれぐらい自分たちの子どもや孫、次世代の人たちに残していけるかということを意識していました。

風が吹けば、枯れ葉が落ちる。
枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。

そんな風にして熟した実は、まさに次世代の人たちにとってのお手本となるでしょう。
そして再び、枯れ葉となり、また新たな生命の糧となっていくことを見守ってくれているのかもしれませんね。

「キングコング:髑髏島の巨神」から考えるゴリラの心



「キングコング:髑髏島の巨神」では、南海の孤島、髑髏島で調査と称して爆撃をするなど人間たちの身勝手な行動が、島の守護神でもあるキングコングによって一蹴されるのですが、他の巨大生物たちと共闘したり、自分や島に危害を加えない人間に対しては攻撃してこなかったりと、単なる猛獣とは言えないレベルの行動を見せています。
それでは、ゴリラの知性とはどのぐらいなのでしょうか?人間の言葉や心を理解できるものなのでしょうか?

Patterson(1978)では、1歳のメスゴリラ"Koko"は、30ヶ月のトレーニングによって、100語もの手話を理解するようになったということを示しています。
最終的にはKokoは2000語を理解するようになったとのことです。
さらにKokoは、絵本で気に入っていたネコを実際にペットとして愛することができ、そのネコが死んでしまったときには悲しみの感情を伝えてきたということです。

ただしこれらの研究成果には批判も存在しています。
有名な事例としては、ハンスという馬のエピソードがあります。

20世紀初頭のドイツ、ヴィルヘルム・フォン・オーステン卿の飼っていた馬、ハンスは、計算や曜日のカウントができ、その答えを蹄をならした回数で示すことができたそうです。
しかし、その後の検証では、ハンスが正しく答えるためには、質問者がハンスの近くにいて、かつ正解を知っている場合のみに限られるということがわかりました。
結局のところ、ハンスは答えが分かっていたのではなく、答えを知っている人間は、正解のタイミングになるとどうしても反応(体勢を変える、体に力が入る、表情に変化が現れる、など)をしてしまうので、その反応を理解し、反応があった時に蹄をならすのをやめるということをしていたのでした。それはそれで賢い気もしますけどね・・・。

このことはクレバーハンス効果と呼ばれ、警察犬の訓練などの際に、本来は正しい臭いを識別してほしいのに、訓練者の態度で反応してしまうなどの問題がある時に取り上げられています。
訓練者が正解を知らない、訓練対象の犬の視界に入らないなどの工夫が必要なようですね。

キングコングも人間が自分の敵対するものなのかそうでないかをしっかりと見極めていたということでしょうねえ。
敵に回らないようにしたいものです・・・。(;・∀・)

[引用]
Patterson, F.G.(1978). The Gestures of a Gorilla: Language Acquisition in Another Pongid. Brain and Language, 5, 72-97.

「キングコング:髑髏島の巨神」感想。


(公式HPより引用)

[story]
70年代後半、米国政府特務機関“モナーク”は、南太平洋の未知の孤島に調査隊を送り込むこととなった。モナークの研究者、ビル・ランダ(ジョン・グッドマン)、ベトナム戦争から帰還したパッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)らに、案内役として雇った元空軍特殊部隊のコンラッド(トム・ヒドルストン)を加えた一行は、ヘリでこの髑髏島に乗り込むも、巨大なキングコングの攻撃を受けてしまう。散り散りになったメンバーはそれぞれ決死のサバイバルを試みることになるが・・・。

「GODZILLA ゴジラ」を手がけたレジェンダリー・ピクチャーズが、「キングコング」を壮大なスケールで復活させたリブート作。
監督は、本作が長編2作目となるジョーダン・ヴォート=ロバーツ。

ギャレス・エドワーズ監督の「GODZILLA ゴジラ」は概ね好意的に受け入れられていた印象で、そのレジェンダリー・ピクチャーズが第二弾として製作したのが、本作「キングコング:髑髏島の巨神」になります。

日本語吹き替え版を担当したGackt、佐々木希、真壁刀義が出演している予告編からしてなんかB級映画感が強い印象でしたが、フタを開けてみれば、往年の特撮パニック映画を彷彿とさせるような雰囲気に現代の映像技術があいまった、まさにモンスター級の作品となっていました。

冒頭の攻撃により、何台ものヘリが叩き落され、生き残ったものも散り散りになってしまいます。
そこからそれぞれ決死のサバイバルが始まるのですが、キングコング以外の巨大生物たちにも襲われ、パニック映画の極みとも言えるでしょう。

登場人物たちも軒並み個性的で、チームを率いるのはロキ様ことトム・ヒドルストン。序盤は不敵なやつという印象だったのがドンドン頼れるアニキ的存在に!

一方、軍人として参加することになったサミュエル・L・ジャクソン扮するパッカードも堅物だけど部下思いの上官になっているし、研究者として参加のジョン・グッドマン扮するランダもオタクな探究心を垣間見ることができます。
ヒロイン枠のウィーバーには、昨年度オスカーを受賞しているブリー・ラーソン。彼女は「フリーファイヤー」もそうでしたがオスカー女優でありながら振り幅大きいのも特徴ですね。

中国人女優として、ジン・ティエンも参加しています。
本作では残念ながら出番はあまり多くありませんが、日本では公開順が逆となった「グレートウォール」ではその美貌とともに大活躍が見られます。なお、映画の方は・・・。

他では日本のミュージシャンでアンジェリーナ・ジョリー監督の「アンブロークン」にも出演していたMIYABIも出演シーンは短いのですがかなりインパクトがある役です。

とにかくキャストも巨大生物たちも魅力的で、戦闘シーンもド迫力と、エンターテインメントとしての映画のツボを心得た作品になっております。
監督のジョーダン・ヴォート=ロバーツは長編は2作目ながら、日本の怪獣映画からジブリ映画まで良く見ていて、まあ、いわゆる、オタク?な監督さんなわけですが、その分、怪獣愛が感じられる作りには好感を持ちました。

ギレルモ・デル・トロ監督の「パシフィック・リム」もそうですが、やはりこういう映画はその道が大好きな人に撮ってもらいたいですね!
「パシフィック・リム」とか「マッド・マックス」とか、とにかく映画なんて楽しく、興奮して、ワクワクできればいいんだろ!っていう方にオススメです!

「ハードコア」から考える一人称視点の没入感



「ハードコア」では、終始、視点が主人公の一人称となっていて、P.O.V.というよりは、F.P.S.と言った方がふさわしいような徹底ぶりでした。
これは映画よりもゲームの世界で取り入れられている手法ですが、その理由としては、やはりその世界に入り込める、世界に浸れるというところが大きいのではないでしょうか。

渡邉・長野・岡ノ谷・川合(2014)では、実験参加者にCGで作成した仮想空間において、画面を一人称的に呈示することで没入感が高まるかを調査しています。

その結果、没入感を高める要因として、時間的遅延のなさ、つまりは自分の視線、視点の動きと同期していることと、見ている画像の解像度、つまりは視野、視界の鮮明さが重要であるということが示されました。

この研究では操作を求められるゲームタイプのものであるので、さらに操作性なども加わるのですが、ともあれ、時間の同期と視野の鮮明さというのは、まさに自分の見たままに対象を捉えるということで重要なんですね。

「ハードコア」では、視線、視点の同期は高いですが、画像の鮮明さという点では若干低いです。
これがゴア描写が多いので多少フィルターをかけているのか、単純に予算的な問題なのかは分かりませんが、よりクリアな映像であれば、さらに没入感が高まるということが考えられます。

そしてゲームとは違い、操作性や慣れの必要もないので、誰でも楽しめるという点では、映画がゲーム以上にP.O.V.のコンテンツにマッチしている可能性もありますね。
さらには、VRを始めとしてハード面での進化もあるので、それに追いつく形でこういったコンテンツが展開されていくのではないでしょうか?

ただし操作的な慣れは必要ないですけど、映像的な慣れは必要なので、P.O.V.酔いにはご注意を!(;・∀・)

[引用]
渡邉翔太・長野祐一郎・岡ノ谷一夫・川合伸幸(2014). 仮想空間における没入感の定量化手法の提案 -仮想空間内での身体移動のずれが没入感に及ぼす影響-. 2014年度日本認知科学会第31回大会発表論文集, 92-95.
プロフィール

すぷーとにく0107

Author:すぷーとにく0107
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中の人は、北海道は札幌市在住です。
映画館で年間200本は映画を観ます。
当ブログでは、映画のレビューをしつつ、勉強している心理学ネタでも書いていけたらいいなと思っています。

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